千葉県浦安市の住宅街。細い通路を進んでいくと、異様な構造物が目に飛び込んできた。土地所有者が自らの敷地にコンクリートブロックを積み上げて築造した、2階建て住宅のような構造物だ。この異例の“違反建築”トラブルは、所有者が2024年12月に警察に逮捕される事態に発展した。
戸建て住宅の敷地の奥にそそり立つ、コンクリートブロック(CB)造とおぼしき構造物。この“違反建築”の高さは優に5mを超えると見られ、窓のような開口部があり、部分的に屋根も架かっている。
ここは、千葉県浦安市北部の住宅などが立て込んだ地域。大規模な埋め立てで市域が拡大する以前から存在する、昔からの住宅街だ。
浦安市建築指導課は24年1月、違反建築パトロールにより、存在を確知した。その時点で既に、構造物は上の写真とほぼ同じ高さまで積み上がっていたという。「土地所有者の60代男性が、DIYでつくっていた」(市建築指導課)ものだった。
現状、市ではこの“違反建築” を、「塀のようなもの」と見なしている。男性がそう主張しており、少なくとも敷地の隣地境界に面しているためだ。「建築基準法における主要構造部の1つである屋根がまだ架かっていない。この要件が満たされなければ建築物と言い切れない」という認識だ。
仮に塀だと見立てると、このエリアは防火地域や準防火地域ではないので、高さ2.2m以下なら確認申請せずにCB造の塀を築造できる、と市は説明する。だが問題の構造物は明らかにその制限を超えている。確知時点で市は行政指導に乗り出した。市によると男性は24年9月、「工事をやめる」と約束したという。
だがその後も工事は継続され、同年11月、市は男性に対し、建築基準法に基づく施工停止命令を出した。「一見して高さ制限に抵触している。鉄筋が建基法の要求通りに入っておらず、控え壁も極めて不十分で、構造安全性に問題がある」という理由からだ。立ち入り検査には所有者の同意が必要で、取材した25年2月時点で実現していない。