中古住宅が当たり前の選択肢となり、流通量も増えている。こうしたなか、「建築と不動産の両方に精通する工務店こそ、中古住宅流通の担い手になるべきだ」と訴えるのが、建物評価研究機構(THK)理事で住宅デザイン研究所代表取締役、一級建築士事務所ホルツバウハウス代表の金堀健一さんだ。2026年4月には不動産事業「広島いい家不動産」を本格始動し、建築知識を生かした新たな事業展開に乗り出した。
金堀さんは、一級建築士に加え、宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスターの資格を持ち、建築と不動産の双方に携わってきた。工務店経営のなかで感じてきたのは、中古住宅流通の現場において建物そのものが十分に評価されていないという課題だ。
「土地や立地だけでなく、建物の性能や維持状態まで含めて評価されるべきだ。しかし実際には、建物の価値が伝わらないまま取引されるケースも少なくない」と話す。
そこで開発したのが「THK住宅査定システム」だ。建築士が建物を調査し、性能や維持管理の状況を反映した査定を行うことで、住宅の価値を見える化する仕組みとして2024年に開発。売主には適正な評価を、買主には安心できる情報を提供し、良質な住宅が適正価格で流通する市場づくりを目指している。
このTHK住宅査定システムは、鳥取県が導入する既存住宅評価システム「T-HAS」の原型にもなっている。T-HASは耐震・断熱性能やリフォームの内容などを評価に反映する仕組みで、良質な既存住宅やリフォーム住宅の価値を適切に評価するモデルとして注目されている。
こうした取り組みを実践する場として立ち上げたのが広島いい家不動産だ。2025年から準備を進め、今年に入りホームページを公開。現在は新築希望者の土地探しや、中古住宅購入・リノベーションを検討する顧客向けの仲介業務を中心に展開している。
同社が重視するのは「ワンストップ対応」だ。不動産探しの段階から建築士が関与し、インスペクションや耐震診断、リノベーション提案まで一貫して行う体制を整えている。「中古住宅を購入する際、本当に知りたいのは建物の状態や将来性。建築士が見れば、その家がどのような性能を持ち、どんな改修が必要かを具体的に説明できる」と金堀さん。建築と不動産を分断するのではなく、両者を融合させることが消費者の利益につながると考えている。
工務店が地域の流通を支える時代へ
一方で、新築中心だった工務店が宅建業に参入することには一定のハードルもあるという。不動産業務のノウハウや人材確保に加え、事業として軌道に乗せる仕組みづくりも必要だからだ。
それでも金堀さんは、「資格を持ちながら活用できていない工務店も多い。工務店には建築の知識という大きな強みがあるのに」と指摘する。背景には住宅業界が抱えている経営面に対しての危機感もある。資材価格高騰や市場環境の変化によって、新築事業だけに依存するリスクは大きくなっている。「リフォーム・リノベーション、中古流通、不動産事業など、地域の住まいに関わる領域へ事業を広げていくことが重要だ。工務店が持つ建築の専門性は、これからの住宅市場でさらに価値を持つはず」と語る。
将来的には買取再販事業なども視野に入れているが、まずは広島で成功事例をつくりたい考えだ。
「建築と不動産が連携すれば、売主、買主、事業者のすべてにメリットが生まれる。工務店が地域の住宅流通を支える存在になれれば」と金堀さん。建物を適切に診断し、適切に改修し、その価値を正しく評価する仕組みづくりが、中古住宅流通の活性化につながると強調した。
(2026/7/23 新建ハウジングWeb)



