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空き家活用へ国が本腰、転用や建て替え促す

空き家対策を推進するため、政府は空き家法の改正案を国会に提出した。「活用促進区域」制度を創設。市町村が区域と活動方針を定め、接道や用途の規制を緩和できるようにする。用途変更や建て替えを促す狙いだ。

 空き家の増加について、以前から問題とされつつも有効打のないまま状況が悪化している。国も喫緊の課題として捉え、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、空き家法)の改正に動いている。2023年3月3日に閣議決定通常国会での法案成立、23年度中の施行を目指す。

接道、用途規制の緩和も

 空き家法改正の柱は大きく3つある。空き家活用の拡大、適正な管理の確保、周囲に著しい悪影響を及ぼす特定空き家の除却の容易化だ。

 「15年の空き家法施行後、市町村の取り組みが進む過程で『建物が危険な状態になってから空き家対策するのでは遅い』という認識が高まってきた。改正案では、危険な状態に陥る前の管理や活用を促す施策を強化している」。法改正の狙いについて、国土交通省住宅総合整備課の深田大寛企画専門官はそう話す〔図1〕。

〔図1〕空き家法改正では「状況悪化前」の対策を強化
〔図1〕空き家法改正では「状況悪化前」の対策を強化
法改正では、特定空き家の前段階に当たる「管理不全空き家」を定めるなど、行政の関与できる範囲を拡大。同時に「空き家等活用促進区域」「空き家等管理活用支援法人」の制度を立ち上げ、空き家活用を促す(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 なかでも建築設計に大きく関わるのは、活用拡大に向けて設ける「空き家等活用促進区域」(以下、促進区域)。市町村は、中心市街地や観光振興を図る区域などから促進区域を定めて活用促進指針をまとめる。

 促進区域内では、空き家改修などに際して建築基準法の接道や用途に関する規制を合理化できる。建て替えに際して敷地の接道規制を緩和する、住宅に用途が限られた地域でも店舗などを設けられるようにする、といった内容だ。前者は安全の確保を前提とし、後者は指針に沿った用途への変更が条件となる。

 建基法でも、個別に特定行政庁の許可を得れば、接道や用途に関する規制の緩和は可能だ。これに対し空き家法改正では、特定行政庁ではなく、空き家対策を担う市町村が主体的に合理化の条件を設定できるようにした。条件は指針で示すので、所有者にとっても分かりやすく、改修や活用のハードルを低くできる。

 この他、法改正では「管理不全空き家」と「空き家等管理活用支援法人」の創設、特定空き家に対する行政代執行の一部手続き緩和などを実施する。

 現行法で定められている特定空き家は、市町村長による助言・指導、勧告、命令、代執行の対象となる。勧告に対して必要な対応をしない所有者は固定資産税などの特例が外され、命令に従わない場合には代執行が可能だ。法改正ではさらに、災害など緊急時の代執行に手続きを一部簡略化した仕組みを設ける。

 一方、法改正で登場する管理不全空き家は、特定空き家になる一歩手前の状態の空き家を指す。市町村長による指導や勧告の対象となり、勧告を受けた場合は固定資産税の住宅用地特例が解除される。

 空き家等管理活用支援法人は、地域で空き家対策に従事するNPO法人特定非営利活動法人)や社団法人に公的立場を与える制度だ。所有者への情報提供や相談対応といった活動を後押しする。建築関係者が力を発揮できる分野といえる。

(2023/3/23 日経TECH)