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架空契約で農地転用 栃木市農業委が「関与」認める 「法人に助言」

 栃木市藤岡町赤麻地区の農地を転用し、福祉施設を開設した社会福祉法人「天成会」(栃木市大平町、島田耕輔理事長)が、元地権者と架空の土地賃貸借契約を根拠に農地法の農地転用を申請し、市農業委員会が転用を許可していた問題。10日の市議会本会議で、同委員会は申請した際に「譲渡人」を元地権者に変更することなどを指導したとされることについて関与を事実上認めた。

 針谷育造議員の一般質問に対し同委員会の熊倉宜和事務局長が「申請手続きをアドバイスしているわけで、故意に誘導しているわけではない」と答弁した。申請書は両者がすりあわせて作成した可能性が浮上したが、虚偽申請か否かの判断は、元地権者が請求した行政不服審査法に基づく手続きの中で、当事者である同委員会が行うという。

 さらに、天成会への指導について問われた熊倉事務局長は「申請手続きなどは、案件が(農業委員会の)総会で不許可にならないよう相談に応じている。農地法の5条申請では農地を所有する方しか譲渡人になれず、そういった手続きをしている」と述べ、譲渡人を当時の地権者とするよう助言したことを示唆した。

 この問題で、天成会の島田理事長は毎日新聞の取材に対し「事実上の所有者のバス会社を譲渡人として申請しようとしたが、農業委員会事務局の指摘で、元地権者に変更した。土地の権利関係についても説明した。事務局の指導だったととらえている」と答えていた。

 指導の認識があったか問われた熊倉事務局長は「不許可にならないよう法的手続きをアドバイスしており、故意の誘導ではない」と繰り返した。また、助言について「市民が目的を達せられるよう、市民に向き合った対応を行っている」と理由を説明した。

 これに対し、農林水産省関東農政局は「農地法は、不許可にしないことなど求めておらず、運用面でもそんな指針はない。栃木市の独自の運用では」との見解を示した。

 また、同市農業委員会でも申請手続きを経験している小山市行政書士は「事務局は、賃貸借契約書や譲渡人の同意書添付は不要と繰り返しているが、賃貸借を申請する際の必要書類に入っており、実際に添付を求められる。譲受人が記名した申請書と譲渡人の登記簿だけで申請が通れば、だれでも勝手に転用できることになる」と指摘している。

(2025/6/11 毎日新聞