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地権者が「通行止め」17年…茨城のシーサイド道路開通

「いままでは迂回して家の近くを通る車が多かったけど、道が開通してからは静かになりました。車で走ってみましたが、海沿いを一直線に鹿島臨海工業地帯まで抜けられるので便利です」(道路近隣に住む住民)

行政と地権者とのトラブルから長年通行止めとなっていた茨城県神栖市(かみすし)の海沿い約15kmを走る「波崎シーサイド道路」が7月10日、17年ぶりに全面開通した。

 「この道路は鹿島臨海工業地帯へのアクセスを良くするために旧波崎町が整備し、’70 (昭和45)年に開通しました。しかし道路に私有地が含まれていることが分かり、町と地権者で裁判になり’04年に地権者の所有を認める最高裁判決が確定します。

地権者の家族は、道路上の私有地にバリケードを設置。無断進入者には高額な通行料を徴収するなどしたため、車両が通れない状態が長い間続いていたのです」(全国紙社会部記者)

地権者側と無理やり通ろうとしたドライバーとの間で、トラブルも起きていたという。しかし今年3月、道路に含まれていた土地を市が買い取ることで地権者との間で和解が成立。ようやく開通することになったのだ。神栖市によると、市が購入した土地はおよそ4000㎡。地権者には和解金として1900万円、土地代と地権者が建てた監視小屋の撤去費用として2100万円の合計約4000万円を支払った。

交通量は1日約5300台

そもそも、なぜ私有地を道路に含めてしまったのか。神栖市の道路整備課が釈明する。

 「道路を作る時に登記簿を調べていますが、該当する場所の公図にはっきりしたものがなく、土地の区画が判別しにくかったのだと思います。場所が海に接する松林ということで目印となる目標物もなかった可能性がある。いずれにしても、道路を利用していた多くの皆様には約17年もの間、ご迷惑をおかけしました」

 

その上で、今後の交通量に関してはこう予想する。

 「通行止め以前の交通量は、朝5時から夜9時半まで約5300台でした。鹿島臨海工業地帯への通勤者や最寄りの海水浴場などへの観光客を中心に、そのくらいは見込んでいます」(同)

市によると、まだ道路上の一部に複数の地権者が所有する私有地が含まれているが、あらかじめ道路法の手続きに沿って供用を始めているため私権を制限できるという。地権者全員の同意が得られれば、市は土地を取得する予定だ。

17年もの間、公共財の道路が使えないという異常事態を招いた市の不手際を、不動産鑑定士の冨田建氏はこう批判する。

 「現場の旧土地台帳附属地図は明治時代に作成された図面が元になっているため、公図が登記された土地の位置を正確に示さず、私有地に市道が食い込む事実を見落としたのかもしれません。だとしても、責任はしっかりと調査をせずに道路建設を進めてしまった市の担当者にある。本来なら市は事前に測量などをしっかりと行い、地権者に土地買い取りの申し出をすべきでした」

元地権者に話を聞こうと何度か電話したが、連絡はとれなかった。現在、通行止めとなっていた周辺は改めて道路整備がされ、海水浴客やキャンパーなどの車で賑わいを取り戻し始めている。

(2023/8/2 FRIDAYデジタル)