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企業の不動産売却が加速 JR東日本、5年で1000億円

企業が保有する不動産を売却する動きが広がる。JR各社は保有するホテルやオフィスビルを売却する。新型コロナウイルスの影響が長期化するなか、資産のスリム化や財務負担を軽くしつつ設備投資資金を確保する。世界的な金融緩和で資金が豊富なファンドが買い手となり、売却後も使い続ける形が増える。保有から利用へと、持たざる経営への転換も進み始めている。

JR東日本は自社も出資して立ち上げた機関投資家が資金を出すファンドなどにオフィスビルなどを売却し、5年間で1000億円超を調達する。JR西日本もオフィスや商業施設をファンドに売り、300億円程度の調達を目指す。JR九州も今後、不動産投資信託REIT)を立ち上げる。各社とも調達した資金で駅周辺の再開発などの資金を確保すると同時に、保有不動産を優良物件に入れ替えていく。

不動産売却は新型コロナによる業績悪化が目立つ業界を中心に増えている。みずほ信託銀行系の都市未来総合研究所によると2020年10~12月の事業法人による不動産売却額は2200億円と同期間として13年ぶりの高水準となった。

21年に入っても2月に藤田観光太閤園大阪市)の売却を発表。3月には近鉄グループホールディングスが大阪や京都など8つのホテルを米ブラックストーン・グループに売却することを決めるなど大型売却が相次いでいる。

業績が堅調な企業でも、在宅勤務の定着など新型コロナによる働き方の変化を受けて、本社を売却する例が増えている。リクルートホールディングス横浜ゴムは本社ビルを売却することを決めた。売却後も賃貸で利用を続ける。

企業の売却を支えているのが、買い手となっている不動産ファンドだ。超低金利が続く中、利回りを確保するために不動産投資に乗り出す投資家も多い。不動産を利用することが目的の事業会社と違い、ファンドにとっては売却する企業が使い続けることが安定した賃料収入につながるメリットがある。

英金融調査会社プレキンによると、今年1月時点で資金を集めている不動産ファンドは1068本と過去最高水準となっている。金額は3140億ドル(約34兆円)に上り、投資余力は拡大している。

世界の大都市に比べた割安感と足元での円安もあり、日本の不動産への注目も高まっている。不動産サービス大手JLLによると、20年の不動産取引額は世界全体で前年比3割減となったが、日本は4%減にとどまった。私募ファンドが買い手としての存在感を高めており、全体に占める比率が41%と、19年の33%から大きく上昇した。

企業にとっては売却しても利用を続けられることで、事業面での変化なく資金を投資や有利子負債の返済に回せる。貸借対照表が小さくなることで、資産効率の向上にもつながるため、売却の動きが広がる可能性がある。

(2021/4/4  日本経済新聞