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安保上の重要土地、政府が取引規制 目的の報告課す  虚偽なら罰金

政府が安全保障上、重要な施設周辺の土地取引を把握するための新法案骨格が分かった。防衛施設や原子力発電所などの周辺を対象に、国が実態を調べやすくする。取得目的を事前に届け出るよう義務付け、虚偽があれば罰金を科す。外国資本だけでなく国内企業も調査対象とし、抜け道を防ぐ。

法整備は経済安保の一環だ。米国やオーストラリアは外資による軍施設周辺などの土地取得を厳しく制限している。米豪と英国、カナダ、ニュージーランドの5カ国で機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」との協力拡大に向け、国内の土地取引の実態把握が欠かせないとみる。

2021年1月召集の通常国会への提出をめざす。対象の土地は自衛隊施設や排他的経済水域EEZ)の基点となる国境離島、原発の周辺など。空港や港湾といった重要インフラ周辺を含める案もある。

政府は法整備にあたり、当初は外資による土地取引に絞ろうとしていた。外資を狙い撃ちにすれば、サービス貿易に関する一般協定(GATS)が定める国内外企業を等しく扱う「内国民待遇」に反しかねない。背後に外資がいる国内企業が対象外になる恐れもあり、国内外を問わず確認できるようにする。

検討中の新法案は企業や個人が安保上重要な土地を取得する場合、その目的を事前に届け出させる。届け出の内容と土地利用の実態が食い違えば罰金を科し、不透明な取引を防ぐ。内閣官房幹部は「数万円程度の罰金では抑止力にならない」と話す。

取得済みの土地についても政府の調査権を強める。土地保有者の国籍が分かる住民基本台帳や、納税の実績を記載した固定資産課税台帳を調べられるようにする。いずれも地方自治体が管理しているため、政府が閲覧できるよう権限を明記する。

日本は私有地の場合、政府に国籍などの個人情報を集める権限がない。政府が現行法で閲覧できる不動産登記は名義変更が任意で、土地取引の実態をつかみづらい。住民基本台帳や固定資産課税台帳を見られるのも、犯罪捜査などの目的がある場合に限られていた。

自衛隊施設の周辺などで監視や盗聴の可能性がある場合、政府が土地を買い上げる仕組みづくりも視野に入れる。現在は自衛隊の演習場のように利用目的が明らかな土地に限られ、施設の周辺など目的が不明確な場合は購入できない。こうした土地も買えるような権限を新法案に書き込むかを検討する。

米国は外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)で外国人による軍施設やハブ空港周辺の土地利用を規制する。大統領は安保上の懸念があれば対米外国投資委員会(CFIUS)の勧告に基づき、取引の停止や禁止を命じられる。豪州も外国人による一定額以上の土地取得は政府の承認を義務付ける。

(2020/12/16 日本経済新聞