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【新型コロナ】「便器がない」中国から輸入途絶え 住宅業界に影響拡大 キッチン、ドアも

 住宅、建設業界が途方に暮れている。便器がない─。新型コロナウイルスの影響で、中国で部品を作っていた便器、便座のほか、キッチン周り、ドアやちょうつがいといった部材の供給が途絶えているという。大手便器メーカーの担当者は「注文が入っても納期を伝えられない」と話す。

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 横浜市内の建設会社の担当者は苦慮していた。「元の仕様では納品が見込めないため、在庫がある代替品を探すのに四苦八苦している。それでも、もうほとんど在庫がない」と明かす。

 この会社では3月末の引き渡し物件でまだトイレが入っていないものもあるという。さらに見通しさえ定かではない店舗物件も出始めている。

 「工期を入れ替えて、内外装、清掃などを先に済ませたりして対応しているが…」。影響が長引けば、引き渡しができない物件も出かねない状況だ。

 中国に七つの工場がある住宅機材機器大手のTOTO北九州市)の広報担当者によると、「2月中旬から商品の納期遅れが出てきた」という。

 「最初は『ウォシュレット』(温水洗浄便座)でしたが、次に便器やシステムキッチン、そして今月12日にユニットバスの部材も納期遅延対象商品に加えました」

 同社では、日本国内向けの陶器製の便器本体は全て国内工場で生産しており、生産自体に影響は出ていない。だが、完成品として出荷するにはさまざまな部品が付け加わる。この部品が中国製で供給が滞っているため出荷できないという。

 個々の部品を製造するサプライチェーンの中で、生産工場を代えるなどの工夫は進められているが、「製品によってはいつ納品できるか分からないものもある」(同社広報担当者)。

 本来、便器が設置されていないと建築基準法上の「完了検査」を受けられない。ただ新型コロナウイルスの影響で一部の設備の供給が十分でないことから、国土交通省は2月27日付で全国の都道府県に通知を出した。「完了検査の円滑な実施について」と題し、柔軟な対応を求めている。

 影響は便器、便座にとどまらない。

 住宅資材大手のナイス(横浜市鶴見区)によると、今では「レンジフードやIH、食洗機といったキッチン関係のほか、扉やそのハンドル、ノブ、レールといった部品まで滞っているようです」(同社広報担当者)。別の建設会社の担当者は「ビルトイン式のエアコンも全然手に入らなくなってきた」と話す。

 横浜市内の建設会社幹部は「どの製品のどの部品を中国で作っているのか分からない。ある製品が、部品の在庫がなくなったらいきなり供給がストップするという可能性もある。トイレがない住宅を引き渡されても住むことはできませんからね」と先行きを警戒している。

 国内の建設現場が、中国での生産品に支えられてきたことで、新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響は一段と深刻さを増している。

(2020/3/20 神奈川新聞社