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【秋野弁護士・緊急寄稿6】法務局の登記手続き停滞?懸念される入金遅れ

新型コロナウイルスの感染拡大抑止に向け「緊急事態宣言」の発令(東京や神奈川、大阪など7都道府県)されるなど状況が深刻化する中、秋野さんは「法務局の登記手続きが大幅に遅れ、住宅ローン実行ができず決済が遅延するという事態が起きている」と指摘する。新たに浮上してきた問題に工務店はどのような準備をしておくべきか、秋野さんに解説してもらった。
 

匠総合法律事務所
秋野卓生弁護士

 

緊急事態宣言が発令されたことに伴い、東京法務局、横浜地方法務局、さいたま地方法務局、千葉地方法務局、大阪法務局、神戸地方法務局および福岡法務局においては、新型コロナウイルス感染症対策として、担当職員の通勤の抑制を始めとする感染防止のための取り組みを行いながら業務を行わざるを得ない状況となり、登記手続きが大幅に遅延するという事態となりました。

当事務所には、いま表題登記を申請しても、上がるが5月20日過ぎになると言われてしまっている法律相談も登場し始めており、これにより、住宅ローン実行ができず決裁が遅延することになります。
 

1 住宅ローンは抵当権設定登記がなされることが条件

建物が完成すると、表題登記を申請することとなり、その後、所有権保存登記の手続きに移ります。所有権保存登記ができると、金銭消費貸借契約(住宅ローン)の抵当権設定登記を設定することが可能となり、抵当権設定登記で担保を把握して、金融機関は融資手続きを実行するのです。

この登記の手続きと住宅ローンの手続きは連動していますので、登記手続きが遅延すると、住宅ローン実行の手続きも遅延してしまうため、工務店への入金が遅れることになります。
 

2 施主に遅延損害金を請求することは難しい

住宅ローンの手続きが遅れることは、施主の請負代金の支払い時期が遅れることを意味します。本来、施主の請負代金支払いが遅延すると、請負契約の遅延損害金の条文で、施主が請負人に対して遅延損害金を支払う旨の条項が多いと思うのですが、今回の事態は不可抗力と評価でき、施主に遅延損害金を請求する工務店は存在しないものと考えます。
 

3 工務店も遅延損害金支払い義務を負わない

施主の住宅ローン手続きが遅れるということは、建物の引き渡しも遅れるということを意味します。しかし、これも不可抗力と評価でき、工務店は施主に対して遅延損害金支払い義務を負わないと解釈すべきでしょう。
 

4 確認書の活用を

おそらく、表題登記の手続きに入る工務店は、次々とこの問題に直面することになると思いますので、あらかじめ、情報として取得していただき、確認書でリスクヘッジをする対応を取っていただきたいと思います。以上の内容を整理した確認書を作成しました。

 

※秋野さん推奨の「確認書」の書式例は以下からダウンロードできます。

 

「確認書」イメージ

 

(2020/4/15 新建ハウジングWeb)