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利用価値考える 所有者不明土地特措法

 国内にある所有者不明土地の問題は深刻だ。有識者らで構成される「所有者不明土地問題研究会」の調査では、2016年時点での所有者不明土地は九州の面積よりも大きいおよそ410万ヘクタールに上るとみられる。さらに2040年には約740万ヘクタールと、北海道の面積に迫る勢いだ。これほどまでに所有者不明土地が増えたのは深刻化する経済の低迷だ。高度経済成長期の日本では、土地は所有していれば価値が上がる財産だった。しかし経済が低迷し地価が下落した近年、土地は財産というよりは負債に姿を変えつつある。そのため利用価値のない土地に関しては所有者が亡くなっても相続登記がなされなかったり、相続が放棄されたりしているのだ。

 所有者不明土地の増加は日本経済に深刻な影響を及ぼしている。例えば所有者不明土地に家屋が建っている場合、管理されずに劣化した家屋が倒壊する恐れもある。自治体がその家屋を撤去することは可能だが、その前に相続関連の調査を行わなければならない。調査に何か月もかかるケースも珍しくなく、自治体職員の仕事や投入される税金の額も増加する一方だ。一方で家屋がない更地である場合、自然災害時に発生したがれきの置き場などの活用法が想定されるが、こちらも相続者が分からなければ利用はできない。他人の土地を勝手に売買する詐欺の温床となりうることも問題だ。

 このような事態を打破するために、所有者不明土地特措法では公園もしくや広場、文化施設などに限り所有者不明土地の利用が認められることになった。土地を利用したい自治体もしくは民間事業者が都道府県知事に申請を行い、知事の裁定によって利用権が設定される。利用権は一定期間ごとに更新が必要で、その間に所有者が現れた場合には原状復帰の上変換するのが原則だ。この特措法により所有者不明土地を公益のために活用することで経済が活性化し、有効活用されることを願うばかりだ。

(2018/6/19 新建ハウジングWeb)