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山形県内で相次ぐ固定資産税過大徴収 遅れる相続登記が原因?「長男が済ませる」思い込みか

 山形県内の11市町で7月以降、不動産相続に関連して固定資産税を過大に徴収したミスが相次いで発覚した。相続登記未了の土地や家屋などは相続人全員の共有資産として課税する決まりなのに、いずれも相続代表者の個人資産と合算して課税したのが原因だ。背景には資産価値の低下や家族関係の変化で、相続登記が遅れがちになっている実態がありそうだ。(山形総局・岩田裕貴)

山形県内の固定資産税過大請求

 「一昔前は相続代表者の長男がすんなり相続登記を済ませるケースがほとんどだった。そうした思い込みによる運用が続いたのではないか」。過大徴収が発覚した自治体のうち、上山市など複数の市町からこうした見方が浮上している。

 現行の不動産登記法は相続登記を義務付けていないため、過疎地を中心に登記未了の土地や建物は増加傾向にある。「相続代表者が間もなく登記するはず」との前提で徴税事務が行われていたとすれば、今回のようなミスは多発する。

 各自治体による2019年度の固定資産税の過大請求は表の通り。米沢市が7月下旬に初めて公表して以来、8月後半から連日のように課税ミスの発表が続く。

 ほとんどの市町で誤った徴収事務がいつ始まったかは分かっていない。「問題意識を持たず、前例を踏襲していた」(米沢市)というケースが多い。

 総務省は13年度、同様のミスを含む事務処理の注意点について通知を出し、市町村は県を通じて情報提供を受けていた。県は事態を重くみて、各市町村に実態の聞き取りを始めたが、山形市など内部調査中の自治体も多く今後、新たにミスが発覚する可能性もある。

 空き家問題に詳しい明海大不動産学部(千葉県浦安市)の周藤利一教授は「資産価値が低く、売買もできない土地や建物を相続した場合、時間と金をかけて登記するメリットはない。相続制度という徴税事務の前提が崩れ、現実と乖離(かいり)している」と指摘。「相続登記の義務化に加え所有者の戸籍、死亡情報などを一元的に管理するシステム整備が必要だ」と提言する。
(2019/8/31 河北新報