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地盤沈下70センチの恐れ! 大阪万博の「惨憺たる現場」を見た

 2025年4月に開幕予定の大阪・関西万博を巡り、会場となる大阪湾の人工島・夢洲の地盤が最大で70センチ近く沈下する危険性のあることが、ノンフィクション作家・森功氏の取材で分かった。会場建設にあたっている関係者たちは危機感を募らせている。

災いとなった「盛土」

 夢洲は元々、大阪湾の人工島として作られた埋め立て地だ。現在、海外からの参加国や企業のパビリオンなどに加え、万博のシンボルとされる「大屋根(木製リング)」の建設工事も進められている。木製リングの建設は3つの工区に分けて入札が行われ、2022年7月に落札したのが、それぞれ大林組清水建設竹中工務店が代表となる3つのJV(共同企業体)である。

建設途中の会場 ©共同通信社© 文春オンライン

 地盤沈下を引き起こす原因となるのが、夢洲で行われた「盛土」だという。森氏は記事の中でこう指摘している。

〈リングは大林組が会場入り口付近の北東工区、清水建設が海側の南東工区、竹中工務店がそれをつなぐ西工区を受注している。博覧会協会関係者が説明する。

「東京のお台場などと違って大阪湾の夢洲は埋め立ての歴史が浅く、地盤が弱い。そのため22年春に盛土をして造成したのですが、それが逆に災いした。新たな土を入れたため、より一層沈下の進む恐れが出てきたのです。それをゼネコン側に指摘され、10月に調査しました」〉

柱の基礎が大きく揺らぐ

 3つの工区のうち、大林組の「北東工区」は内陸に位置するため、1センチ程度の沈下で済む見通しだったという。ところが、清水建設の「南東工区」と竹中工務店の「西工区」では、衝撃的な数字が出た。

〈23年4月から24年末までの1年半の工事の期間中、実に70センチ近くも地盤沈下する危険性があるというのである。もともと南東工区の清水建設は海中の地盤に杭を打ち込む工法を認められてきたため、地盤が沈んでもリングの柱が傾くことはない。だが、竹中工務店が受注した陸上の西工区では、柱の基礎が大きく揺らぐことになる。〉

協会に見解を求めると…

 これを受けて竹中工務店側は、地中に杭を打つ工法に切り替えたいと申し出たという。だが、結局、時間的な余裕がなかったために、特殊な工具を使ったジャッキアップなどにより対応することになった。ただし、木製リングの入札時には想定されていなかった工法を使うことになったことで、結果として過大なコスト増加につながってしまったという。

 博覧会協会に対し、地盤沈下についての事実確認と安全性についての見解を求めると、次のように回答した。

〈会場内は大阪市が埋め立てによる土地造成工事を実施しています。埋め立て完了後しばらくの間は沈下することが通常です。

 このため協会としては、2022年4月に大阪市から引き継いだ会場の造成工事を計画する際に、大阪市埋立地の沈下予測を活用し、新しい沈下量の実測値を踏まえ、将来沈下量を推計したもので、これに基づき、22年10月から造成工事を実施しています。

建物の沈下対策としては、設計に係るガイドラインにおいて、建築物等による地盤沈下を抑制するため、新たな上載荷重を加えない基礎形式として浮き基礎等で計画することを推奨しており、建物の設計段階で沈下抑制に配慮するなどにより、安全面の懸念はないものと考えています。

 なお、沈下量は継続して測定しており、現時点では大きな問題は発生していません。〉

 2月9日発売の「文藝春秋」3月号及び、「 文藝春秋 電子版 」(2月8日配信)に掲載した森氏の記事「 大阪万博のデタラメ発注を暴く 」では、地盤沈下以外にも、リングが落札された時点で抱えていた構造設計上の問題についても指摘されている。また、井上信治氏や若宮健嗣氏ら歴代の万博担当大臣に加え、馬場伸幸代表や遠藤敬国対委員長をはじめ、万博の旗振り役を担ってきた日本維新の会の幹部議員にも、なぜ会場建設が遅れているのかなど、大阪万博を巡る多くの問題点を問いただしている。

「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年3月号)