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沖縄の日本復帰前に埋め立てられた北谷町の「ゼロ番地」 所有権をめぐり息子と県が対立、今なぜ?

 日本復帰前の1971年に埋め立てられた沖縄県北谷町砂辺にある約2万5千平方メートルの土地(通称・ゼロ番地)は、個人が無免許で不法に埋め立てた「無願埋め立て地」として県管理の国有地となっている。だが同地を埋め立てた男性の息子は、琉球政府の指導に基づいて免許申請などをしたにもかかわらず琉球政府や県の瑕疵(かし)で無願扱いになったと訴え、所有権の移転を県に要求している。一方、県は関連する法律の廃止などを理由に要求に応じることはできないと主張。男性側は政治判断での解決を求めている。(政経部・東江郁香、中部報道部・砂川孫優)

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 男性は復帰前、米軍に膨大な面積の土地を接収された北谷地域の住宅地不足解消を目的に、大規模な埋め立てを計画。琉球政府から北谷村(当時)の約60万7千平方メートル(東京ドーム約13個分)の海域に対する公有水面埋立免許の交付を受け、1967年2月28日に埋め立て工事に着手した。

 その後琉球政府は、男性が免許を受けていない約2万5千平方メートルの海域も埋め立てたとして、無免許での埋め立てに対し後追いで免許があったとみなす「追認申請」を行うよう指導。男性は新たに同面積の公有水面埋立免許を申請したが、提出書類が約6年間処理されないまま復帰を迎え、74年の公有水面埋立法改正に伴い追認制度が廃止された。

 ゼロ番地は無願埋め立て地に当たるとして県は83年、埋め立て地の原状回復義務を免除する手続きを行うよう男性に文書で通知。男性が応じなかったため、職権を使って無償で国有地にする処分を下した。

 これに対し男性は、そもそも追認申請の処理をしなかったのは県の不作為だとして県を提訴。処分を取り消すよう求める裁判も起こしたが、いずれも最高裁判所に棄却された。

琉球政府が実施設計を認可

 裁判から30年以上もたった今年2月、男性の息子の代理人らは県庁記者クラブで会見を開き、これまでの県の対応を疑問視し、所有権の移転を県に要求した。

 

 埋め立て工事着手前の67年2月21日に琉球政府からゼロ番地を含めた約63万1千平方メートルの海域面積の「実施設計認可」を受けていたことが、2015年の情報公開請求で判明したことなどがきっかけだ。

 復帰前は、新たに公有水面埋立免許を申請しなくても実施設計の段階での埋め立て面積の拡張が条件付きで認められていた。男性側の代理人らによると、74年の法改正以前は面積変更を実施設計の変更として処理する実例があり、男性は琉球政府の指導に基づき面積を増やした。

 県は最高裁判決や関連の法律の廃止などを理由に挙げ、「現行法で対処できる問題ではなく、現時点で代理人らの要求に応じることはない」としている。

 男性側は現在、最高裁判決では実施設計が審理の対象となっていないとし、県に(1)実施設計認可で公有水面埋立免許を受けた前提とする(2)原状回復義務を免除した処分を職権で取り消し、申請時説で追認申請を許可する-などの解決策を提示。現行法で対応できない県の立場に理解を示しつつ、政治判断での解決を求めている。また、追認申請を相当期間内に処理しなかったのは「応答義務違反」に当たるとし、県に損害賠償責任が生じることも指摘している。

■町は跡地利用を計画

 一方、総面積の約52%を米軍基地が占めてまとまった土地が少ない北谷町は、ゼロ番地について跡地利用計画を立てている。

 同地は一時期、複数の解体業者が不法占有して大規模な不法投棄や火災の頻発が問題となっていた。現在は県が管理する国有地だが、売買の主体は国に限られているため、県は汚染を除去した上で国管理に移行する方針だ。昨年度は地歴調査を実施し、本年度は土地の汚染状況をみる環境調査を予定している。

 北谷町は「西海岸に面する貴重な区域。県が早期に土地の支障除去を完了させ、町の利用構想を推進させてほしい」と求めた。

 

 
 沖縄の日本復帰前に埋め立てられた北谷町の「ゼロ番地」 所有権をめぐり息子と県が対立、今なぜ?
沖縄の日本復帰前に埋め立てられた北谷町の「ゼロ番地」 所有権をめぐり息子と県が対立、今なぜ?© Okinawa Times

 

 
 沖縄の日本復帰前に埋め立てられた北谷町の「ゼロ番地」 所有権をめぐり息子と県が対立、今なぜ?
沖縄の日本復帰前に埋め立てられた北谷町の「ゼロ番地」 所有権をめぐり息子と県が対立、今なぜ?© Okinawa Times
(2023/5/8  沖縄タイムス