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空き家解体、補助金の不適切受給相次ぐ…跡地利用の約束守らず売却・牛舎も申請

空き家を解体する国土交通省自治体の事業で、補助金の不適切な受給が相次いでいることが会計検査院の調べでわかった。約束に反して跡地を売却したり、牛舎の解体で補助を申請したりする違反などが198件見つかった。検査院は国交省に対し、一部の受給者から補助金を返還させることなどを求めている。

■「雪捨て場」

 「月極(つきぎめ)駐車場 空きあります」

 能登半島に位置する石川県輪島市の中心部。先月、かつて空き家があった場所を記者が訪れると、車10台ほどがとめられる駐車場になっていた。契約者を募る看板もあった。

 近隣住民や不動産登記簿によると、この土地に木造2階建て住宅が建築されたのは1971年。10年以上空き家になった後、所有者が亡くなり、2017年に県内の別の自治体に住む親族が相続した。

 輪島市などによると、親族はその後、国と市から計数十万円の補助金を受け、19年3月までに空き家を解体した。補助金は跡地の「公益的利用」が受給条件で、親族は申請時に口頭で「地域の雪捨て場にする」と約束したという。

 だが親族は同年12月、跡地の近くに住む男性に土地を売却し、男性が駐車場にしていた。親族は取材に「跡地利用の約束はしたが、期限はなかった。固定資産税もかかるので早めに売りたかった」と語った。

■最大8割助成

 空き家を解体する補助事業が本格的に始まったのは16年度。老朽化が進む空き家を放置すれば、近隣の住環境が悪化するとして、国と自治体が解体費の最大8割を住民に助成する。

 特に倒壊の恐れが強い「不良住宅」は跡地利用の制限がないが、そこまで危険性の高くない空き家を解体する場合は、跡地の「公益的利用」が条件となる。公園や防災空き地、雪捨て場などが対象になる。

 検査院が今回、全国で行われた解体事業のうち15道県・76市町村の487件(補助額約13億円)を調べたところ、輪島市と北海道小平町の計134件で、公益的に利用されるはずの跡地が民営駐車場や個人宅になっていたり、雪捨て場などとして近隣に周知されていなかったりした。

 補助の対象は空き家なのに、牛舎や倉庫などの解体に補助金が出ていたケースも3道県の6市町で判明した。例えば、大分県豊後大野市では空き家1棟の解体費として住民に約25万円が支給されたが、検査院が確認すると、母屋と同じ敷地内の倉庫だった。

 検査院はこれらを含め4道県・10市町の198件(補助額約5000万円)を不適切と認定した。

■統一ルールなし

 約束に反して売却する行為などを防ぐため、対策を講じている自治体もある。

 東京都墨田区補助金を支給する際、跡地を原則10年間無償で借り上げる契約を住民と結び、火災時に延焼を食い止める防火用の空き地として活用している。福井県越前町は、跡地を目的通りに利用することを文書で住民に誓約させている。

 だが、国交省は「地域の事情はそれぞれ異なる」として、統一ルールを設けていない。検査院は、輪島市のように跡地利用の期限を設けず、口頭での確認しかしていない自治体も少なくないとみている。

 国交省は今後、跡地の利用実態や自治体による補助金のチェック状況などについて調査する方針で、同省住宅総合整備課は「調査結果を踏まえ、補助基準の見直しも含めた対応を検討する」としている。

(2022/11/3 読売新聞)