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築40年超えると不具合増加 迫り来るスラム化の危機

 バルコニーのあちこちで外壁タイルが大きく剥がれている。手すりの鉄部もさびてぼろぼろ。バルコニーの裏面には雨染みも見える。給水管からは赤水が出て、配管からの水漏れも頻発しているという。

 鹿児島市内に建つ築46年のAマンション〔写真1〕。2年前に外壁タイルが大量に剥落する事故が発生したため、管理組合は管理会社に依頼して落下の恐れがあるタイルを剥がして対応した。

〔写真1〕外壁タイルが大量に落下
〔写真1〕外壁タイルが大量に落下
Aマンションの外観。2年前に外壁タイルが大量に落下した後、落下リスクのあるタイルを剥がした。バルコニー裏面には雨染みも各所に見られる(写真:日経アーキテクチュア)
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 この際、管理組合は管理会社に大規模修繕の見積もりを依頼した。提示額は、耐震補強を除いて1億2000万円。修繕積立金では賄えず、実施は諦めざるを得なかった。

 Aマンションでは分譲当初に管理組合が組織されていなかった。しばらくして管理組合を立ち上げたが、計画修繕をしてこなかった。

 築35年を迎えた頃に建て替えの議論が持ち上がった。建て替え委員会で区分所有者の費用負担を平均1500万円以内とする案をつくり、複数のデベロッパーに事業協力を求めた。全社が建設費高騰を理由に断ったため、議論は棚上げとなった。

 現在は空き家の増加と区分所有者の高齢化で、管理組合の活動自体が困難になりつつある。

 管理組合は自分たちの立場で考えてくれる建築のコンサルタントなどに建て替えについて相談をしたいが、そのための資金はない。市街地環境の整備改善などを図る「優良建築物等整備事業」に老朽化マンションの再生を推進する補助制度があると知り、鹿児島市に問い合わせるも、市では分譲マンションを対象にした事業を実施していない。どうにも身動きが取れない状況だ。

 老朽マンションの相談に当たるNPO法人鹿児島県マンション管理組合連合会の有薗修一郎理事長は、「このままだと、このマンションはスラム化の危機を避けられない。何らかの支援制度が利用できるような対策が急務」と訴える。

(2022/7/28 日経XTECH)