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外資の土地取得制限を検討 防衛施設や原発周辺

政府は外国人や外国資本の企業による国内での土地取得を制限する検討を始めた。米軍や自衛隊の関連施設、原子力発電所の周辺など安全保障上の懸念がある地域などを対象に事前審査などを求める案がある。現在、日本国内の土地は原則として誰でも取引できるが、安全保障の観点から、一部の土地取引は監視を強める。

日本では、外国資本による防衛施設や原発の周辺だけでなく、水源地の森林などを含めて土地取得に関して外資規制はない。仮に防衛施設の近隣で土地を取得されれば、盗撮や盗聴などにさらされるリスクがある。テロ攻撃や情報漏洩につながれば、安全保障上の脅威になりかねない。

防衛省は2013年に自衛隊施設の周辺の土地取得に関して抽出調査を実施したことがある。北海道や長崎県で外国人や外国資本による土地取引があった。

政府高官は「中国人が米軍や自衛隊の基地周辺の土地を取得していたり、他国の外国人から譲り受けていたりする可能性がある」と話す。自衛隊施設や原発の周辺地域の外国人による土地取得の実態について、明確な資料や統計はなく、政府も全体像を把握できていないとみられる。

政府は20年6月をメドにまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、外国人による土地取得の制限について方向性を示す方針だ。自衛隊施設や原発の周辺など対象の線引きや規制の手法を詰め、21年の通常国会までに新法の制定を軸に法整備を急ぐ。

米国は外国企業による米国企業への少額出資や合弁会社設立に加え、軍事施設や空港、港湾に近い不動産の取得も20年2月までに審査対象にし、事実上制限できるようにする。中国では外国資本が土地を所有することはできない。

外国人の土地取得については、国籍で差別しないとする世界貿易機関WTO)協定がある。安全保障を理由にした取得制限は認められているものの、日本は「留保」を主張せずに受け入れた。見直しにはWTO加盟国との交渉が必要となる。

日本では19年11月に原子力やIT(情報技術)など安保上、重要な日本企業への出資規制を強化する改正外為法が成立した。中国の脅威を念頭に、重要技術や機密情報の流出を防ぐ狙いがある。欧米諸国もここ数年、中国の脅威を念頭に外資規制の強化に踏み切っている。日本も足並みをそろえ「安保と投資」の両立を図る。

日本には戦前の1925年に制定した外国人土地法がある。「国防上、必要な地区で政令により取得を禁止・制限できる」と明記するが、政令を定めておらず機能していない。大日本帝国憲法明治憲法)のもとで「陸・海軍の軍事活動を前提とした規定であること」などから、政府はこれを根拠とする規制は難しいとみている。

(2020/1/21 日本経済新聞