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自宅が売れない? 不動産取引の死角3選

 転職や退職、結婚や出産など、人生で何度か訪れる大きな転機。家族構成やライフスタイルの変化に合わせて家を住み替えることは珍しくありません。

 その際に、自宅を売って転居の費用を賄いたいと思う人は少なくないでしょう。ただ、不動産取引のルールを知らなければ、思うように住宅が売れず、転居に必要な資金を確保できないかもしれません。

 今回は、住宅売却の注意点を取り上げます。不動産取引に不慣れな人には死角ともいえる問題です。筆者の不動産コンサルタントが自身の経験を基に解説します。紹介する記事3本は、2023年7月26日~8月1日に無料で読めるようにしました。

(イラスト:高松 啓二)
(イラスト:高松 啓二)
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 1本目は、建築確認済み証を巡る問題です。「建築確認済み証って何ですか。そんな書類は見たことがありません」。自宅の売却で来訪した売り主は、確認済み証の有無を尋ねた筆者の質問に、困惑した表情を浮かべました。

 確認済み証とは、住宅の建築計画が関係法令に適合していることを行政が認めた書類です。確認済み証がないと、買い主が住宅ローンの審査を受けにくくなるなど、売却をスムーズに進められなくなる恐れがあります。

 2本目は、中古住宅向けの住宅ローン「フラット35」を巡る問題です。「技術基準に適合しませんでした」。住宅の売り主は、筆者の言葉に肩を落としました。

 フラット35は金利が低く、年収の10倍弱までのローンを組める可能性があります。通常の銀行の住宅ローンは、上限額の目安が年収の7~8倍です。買い主がフラット35を利用できるか否かで、住宅の売れ行きが変わるといわれます。

 ただフラット35には、買い主への融資に必要な技術基準があります。主に建物の耐久性に関する基準です。売り主の住宅は基準に適合していませんでした。

 3本目は、登記簿を巡る問題です。「やっと買い主がついて喜んでいたのに。住宅が違法建築だから融資できないと地元の信用金庫にいわれたそうです」。自宅の売却がご破算になった売り主は、弱り切った様子で筆者に打ち明けました。

 その信用金庫は、登記簿の土地面積と建築面積を基に、建物の建ぺい率と容積率を算出。基準値を超過したので、建物を違法建築と判断し、融資を断ったのです。ただ、売り主が建築確認済み証で確かめると、基準内に収まっていました。

 登記簿と確認済み証の数値がどうして食い違っているのか——。困った売り主が筆者のところへ相談に来たのです。

(2023/7/26 日経XTECH)