国土交通省九州地方整備局は、鹿児島市吉野町にある国道10号沿いの崖地に対し、土地所有者に崩壊対策を命じることができる道路法上の「沿道区域」に指定した。九州地整によると、直轄国道で沿道区域を指定したのは初めて。
民有地では周囲の安全確保に要する費用を土地所有者が負担するのが原則のため、対策が遅れがちだ。九州地整では、行政が対策費用を負担できる同制度を利用して落石リスクに先手を打った。
九州地整鹿児島国道事務所が2021年7月30日、沿道区域を指定し、土地所有者に安全対策を講じるよう命じた。区域の長さは道路に沿って18mで、幅が10.2m。路面から約15mの高さに、不安定とみられる岩塊がある。
岩塊の大きさは高さ約3m、幅約2m、奥行き約1m。崖地との境目に亀裂が確認されている。九州地整によると以前から亀裂があり、20年の定期点検や21年5月の大雨を受けて実施した点検で変化は見られなかった。
九州地整は、緊急対策が必要とは言えないが、今後の大雨や地震などで岩塊が落下する恐れがあると判断。崖の傾斜が急で、道路敷地内に防護柵を設置しても安全が確保できないため、土地所有者に対策を命じられる沿道区域の指定を決めた。
国道10号は鹿児島市と九州東部を結ぶ幹線道路だ。「岩塊の危険度の急変に備えて、事前に予防策を打とうと考えた」(九州地整道路部道路管理課)
(2021/8/17 日経XTECH)