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公園内に「ぽつんと私有地」の謎 整備から30年後に発覚した常滑市の勘違い

 「常滑市の公園の中に私の土地が混じっている。30年間、市に無断で使用されている」。市出身で、私有地の所有者という名古屋市の女性(75)から、本紙にこんな情報が寄せられた。そんなことが、本当にあるのか。半信半疑で調べてみた。

 公園とは、1993年にオープンした市南部の小脇公園。小高い丘から伊勢湾を望め、市外からの利用も多い。芝生広場やバーベキュー施設があるエリアと、森のエリアの二つに、大きく分かれる。

 女性の言う私有地は3・2ヘクタールの森のエリアの北端にある。面積は、二筆で計713平方メートル。提供を受けた地図を頼りに現地を訪ねると、細い丸太で土留めされた散策路が土地の真ん中を通っていた。

 事情を探るため、市役所に取材すると、「市が占有管理しているのは事実。長年、私有地と把握できていなかったことはおわびするしかない」と担当者。あっさりと不備を認めた。

 なぜ、こんなことが起きたのか。

 市によると、公園は30年前の当時、複数の地権者から用地買収して整備したとみられる。女性によると、今回問題となっている私有地も、当時の所有者だった父親が市から買収を持ちかけられたと伝え聞いている。だが、理由があって断ったのだという。

 一方、市によると、市は当時、この私有地を市有地と誤認して公園を整備。散策路を通し、園内の案内看板でも散策ルートとして示していたのだという。「当時の記録が残っておらず、誤認した理由は分からない」と担当者。買収が成功したと勘違いしたのか、単なる事務作業上のミスなのか−。いろいろと推測はできるが、真相はやぶの中だ。

 その後も、この私有地は市のものとして庁内で引き継がれたまま、長い年月がたった。草刈りなどの保全作業は当たり前のように公金でまかなわれてきた。

 この私有地は固定資産税の課税対象外のため、女性も気付かなかったという。市としては、土地の所有者が分かる土地台帳や、小脇公園内の地番を記した財産台帳を調べれば、問題を把握できた。だが、担当者は「問題意識を持ってピンポイントで調査しないと、とても気付かない」と釈明する。

 発覚のきっかけは、市などが2019年度から4カ年で実施した再整備事業。散策路を新しくしたり、不要な樹木を伐採したりする事業の過程で、園内の土地を調査して分かったという。市は21年6月に女性に面会して説明。今は買収交渉を進めている。私有地部分は、今も物理的に通行できる状態になっている。

 こうした事例はよくあるのか。県不動産鑑定士協会に尋ねると、担当者は「あってもおかしくはないが、かなりレアな(珍しい)ケースだと思う」。一方、県土地家屋調査士会の担当者は「公用地の一部が私有地だったという点で言えば、境界線の誤認などでままあるケース」と話した。

 いずれにしても、早く適正な状態に戻ることを願うばかりだ。

(2023/5/30 中日新聞Web)