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群馬県が保安林解除せず上信道を供用、不正発覚で工事中断も

群馬県が建設中の上信自動車道で、保安林の指定を解除せずに工事を進め、一部の区間で供用を続けてきたことが分かった。県の職員が不正な事務処理を行っていた。施工中の区間でも同様の問題が発覚し、工事を中断した。工事再開の見通しは立っていない。県が2022年8月22日に公表した。

 上信道は、関越自動車道上信越自動車道を結ぶ延長約80kmの地域高規格道路群馬県渋川市の関越道渋川伊香保インターチェンジ(IC)付近から、東吾妻町長野原町、嬬恋(つまごい)村を経て、長野県内の上信越道につなげる計画だ。東吾妻町長野原町を通る八ツ場(やんば)バイパス(延長約9km)など、計20km余りが開通している。

上信自動車道の群馬県内の計画路線。青色が供用区間、赤色が整備中の区間(資料:群馬県の資料を基に日経クロステックが加工)
上信自動車道の群馬県内の計画路線。青色が供用区間、赤色が整備中の区間(資料:群馬県の資料を基に日経クロステックが加工)
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 問題となっているのは、上信道で20年6月に供用を開始した祖母島(うばしま)~箱島バイパスの工事だ。渋川市祖母島と東吾妻町箱島を結ぶ延長約4kmの区間で、祖母島と箱島の間に位置する東吾妻町岡崎の現場で不正があった。吾妻環境森林事務所の50代の職員が、保安林解除の申請書を放置し、必要な手続きを怠っていた。

 職員は、東吾妻町の西側で工事を進めている岩下、松谷、三島の3カ所でも、解除申請を放置していた。このため、県は8月17日に3カ所の工事を中断。解除権限を持つ国に、岡崎を含む対象箇所の解除申請を行い、手続きを進める。開通済みの区間については、土砂流出など災害発生の危険性が低いとみて、供用を続ける。

 国が保安林解除を認める場合は通常、申請後90日以内に県に解除予定を通知する。これを受け、県が解除予定を告示。告示後40日を経ても異議がなければ、保安林内の作業を認める許可を出す。その後、代替施設(防災施設)の設置を確認し、国にその状況を報告。問題がなければ、国が解除の確定を県に通知する。

 上信道の工事を再開するには、少なくとも保安林内の作業許可が必要となる。作業許可の発出には通常、国の解除予定通知までの期間(標準90日以内)と、県の解除予定告示の期間(40日)を合わせた4カ月余り(130日程度)の日数を要する。

 県は上信道工事の早期再開を図るため、国に解除予定通知までの期間の短縮を求める考えだ。それでも、県の解除予定告示の日数は制度上減らせないため、工事再開には最短でも2カ月ほどかかる見通しだ。

(2022/8/30 日経XTECH)