住宅新築時の登記ミスを巡り、建て主が土地家屋調査士を訴えたが敗訴に終わった。建て主は判決確定後も同様の内容で土地家屋調査士を再度訴え、さらに登記事務を委託した住宅会社まで同じ内容で提訴した。(日経アーキテクチュア)
今回取り上げるのは、建築訴訟において、裁判制度の基本的なルールが争われた裁判だ。
概要を説明しよう。発端は1996年に遡る。原告は住宅の建て主で、建設地は宮城県松島町。この土地は原告の妻の父親が所有するもので、その一部を分筆して原告宅とする計画だった。96年9月、原告は住宅会社と設計・施工一括の建築工事請負契約を締結した。
住宅が完成した後の97年5月、原告は住宅会社を通じ、建物の登記を土地家屋調査士に依頼した。だが、分筆からの一連の登記において、敷地形状が実際の境界とは異なるという申請ミスが起こったという。
原告は2016年、このミスが不法行為に当たるとして、登記事務を実施した土地家屋調査士を相手取り、仙台地方裁判所へ提訴した。引き渡しから約20年後、建物の南側に段差解消のためのスロープを設置しようとしたが、誤った敷地境界のためにこの工事ができなかったという。こうして隣地境界が不明確となったことで精神的苦痛を受けたとして、慰謝料600万円を請求する内容だった。
ただこの訴訟は、裁判所が一貫して「登記申請は土地所有者ないし原告の利益を侵害していない」(1審判決)などと判断。土地家屋調査士の責任を否定した。建て主は最高裁判所まで争ったが、19年に敗訴が確定した。建て主はこの後、土地家屋調査士を相手取ってもう一度同じ内容の訴訟を提起した。
(2023/9/14 日経XTECH)