コンクリート関連の技術革新が止まらない。生産性の向上や脱炭素化に向けて、さまざまな企業が技術開発でしのぎを削っている。なかでも今、最も動きがあるのが「建設3Dプリンター」だ。
「国内の建設3Dプリンター技術は海外勢に大きく遅れを取っていたが、緻密で耐久性に優れたものを“印刷”できるようになった。今は海外勢にも引けを取らない」。こう語るのは、国内の建設3Dプリンター研究の第一人者である石田哲也・東京大学大学院教授だ(資料1)。
国内技術の飛躍を象徴するかのように、2022年ごろから埋設型枠や擁壁、トイレ、倉庫の印刷案件が急増。土木学会の調べによると、22年1月時点では全国で10件程度だった事例数が23年6月末には58件に達した(資料2)。
人手不足や24年4月から適用される残業上限規制への対応といった課題を抱える建設業界では、省人・省力化や工期短縮などを実現できる建設3Dプリンターの本格導入に期待が高まる。ただし、今後爆発的に普及させるためには解決しなければいけない課題が残っている。それは「品質や耐久性などを確認する試験方法のルール化」だ。
企業ごとに使用するプリンターや素材が異なるため、これまで印刷物の性能を評価する手法を定めるのは困難だった。しかし、多くの活用事例が登場したことで、どのプリンターを使ったとしても、最低限守らなければいけない性能が見えてきた。
そこで土木学会は23年8月、「建設用3Dプリンターによる埋設型枠設計・施工指針(案)」を作成する新委員会(委員長:石田教授)を設立。急ピッチで検討して1年半で指針をまとめ、普及を後押しする計画だ。
(2023/9/19 日経XTECH)