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2024年問題迫る建設業、現場への技術者派遣が急増

 建設業で2024年度から残業の上限規制が適用されるのを控え、派遣会社が現場に送る技術者の数が急増している。派遣人材の大半は建設業の仕事の未経験者だ。建設需要が高まった東京五輪前を超え、過去最高の派遣数となる会社が複数出てきた。

建設現場で働く派遣技術者。未経験の若手が多い(写真:夢真)
建設現場で働く派遣技術者。未経験の若手が多い(写真:夢真
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 転職市場では、経験のある派遣技術者は極めて少ない。一方で、入社3年以内に退職する若者の増加などを受け、未経験の若手人材の供給が拡大している。

 例えば、未経験者に特化した建設技術者の派遣事業を手掛けるアーキ・ジャパン(東京・新宿)。近年、新型コロナウイルス禍だった一時期を除き現場への派遣数を右肩上がりに伸ばし、23年10月末には約1800人と過去最高となった。東京五輪関連の建設需要が高かった19年10月末よりも16%多い。

アーキ・ジャパンの建設現場への派遣数の推移(出所:アーキ・ジャパンの資料を基に日経クロステックが作成)
アーキ・ジャパンの建設現場への派遣数の推移(出所:アーキ・ジャパンの資料を基に日経クロステックが作成)
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 アーキ・ジャパンの吉田周平社長は「未経験者の派遣需要の高まりに、応え切れていない。残業規制の適用などで今後さらに需要拡大が見込まれており、派遣人材の採用を急ぐ」と語る。直近1年間で前年から3割増の約1000人を採用。来年度には、約1300人を採用する方針だ。

アーキ・ジャパンの吉田周平社長(写真:日経クロステック)
アーキ・ジャパンの吉田周平社長(写真:日経クロステック)
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 特に未経験者の引き合いが増えているのは、工事書類の作成など現場技術者が担ってきた業務を、本社や支社で一部引き受ける支援部門への派遣だ。大手建設会社を中心に、規制対応へ向けた専門部署の立ち上げなどで人材ニーズが高まっている。

 建設技術者の派遣最大手の夢真(東京・港)では23年6月、大手建設会社の支援部門への派遣数が、2年前の同時期の約2倍となった。23年9月末時点で現場に派遣中の建設技術者は約6000人と過去最高を記録。その85%を建設業未経験者が占める。

夢真が抱える建設技術者数の推移(出所:オープンアップグループの資料を基に日経クロステックが作成)
夢真が抱える建設技術者数の推移(出所:オープンアップグループの資料を基に日経クロステックが作成)
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 夢真の高津尚史執行役員は、「大手は派遣人材の定着率が高い。重要な派遣先だ」と話す。

夢真の高津尚史執行役員(写真:日経クロステック)
夢真の高津尚史執行役員(写真:日経クロステック)
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 一般的に派遣会社の間では、現場支援部門に限らず、大手への派遣を重視する傾向がある。まとまった数を採用することに加え、労働環境に恵まれていることの影響が大きい。中小の建設会社では依然として、規制上限を超えることを理由に派遣人材の残業を拒否すれば、クレームが入るケースがある。

 

 支援部門で建設業の仕事を一通り覚えた派遣技術者は、その後現場に派遣すると、即戦力として施工管理の補助などに臨める。だが、現場で活躍できるようになっても、派遣人材が同じ現場で働ける期間は基本的に3年までと労働者派遣法で定められている。

 

 そのため、1~2年間現場で一緒に働いた派遣技術者を、自社の社員として採用する会社は少なくない。仕事を覚えた技術者に、引き続き現場を任せられるからだ。派遣期間で人物を見極められる利点もある。こうした採用は従来、中堅・中小で多かったが、最近になって大手でも増え始めた。

(2023/11/17 日経XTECH)