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熊本地震の宅地復旧工事 高額復旧、狙われる宅地 複数見積もり、相談を

 熊本地震で傾いた家屋を直す宅地復旧工事で、被災者が高額の見積額を提示される事例が発生している。宅地復旧は専門業者が少なく、工法も多くて適正価格が分かりにくい。さらに復興基金からの支援金を見越して高額の見積額を示す業者がいるとみられる。県や市町村は「業者選びは慎重に」と注意を呼び掛けている。

 熊本市東区沼山津の元会社員、長尾正博さん(68)は、自宅敷地の一部が地震で約17センチ沈下し、家屋が傾いた。半年後、「ジャッキアップして直す」という業者2社が訪問。いずれも県外業者で、見積額は600万円と400万円強だった。

 年金暮らしで余裕がなく迷っていると、「急いだ方がいい」とせかされた。しかし、「工事後に問題が発生しても補償はしない」と言う業者に不信を抱き断った。翌年、別の業者に同じ工法で頼んだところ、工事費は約280万円だった。

 支援金も出たため、手出しは100万円弱で済んだ。長尾さんは「短期間に荒稼ぎしようとする業者がいるようだ。税金である支援金が悪徳業者に狙われている」と懸念する。

 益城町広崎の元会社員、荒木優児さん(64)も家屋が約15センチ傾いた。当初、業者から示された工事費は600~700万円。「周囲には800万円と言われた家もあった」という。荒木さんも業者を慎重に選び、工事費を約240万円に圧縮できた。

 被災宅地の復旧は、公共性の高い工事を除き、本来は全額被災者の負担だ。しかし、県は、工事費から50万円を除いた額の3分の2を復興基金から支援する制度を創設。最大で1000万円の工事費に対し633万円を支援している。

 同制度は、3月末時点で熊本市益城町をはじめ28市町村で実施。計約4300件の申請があり、約3900件の工事が終わり計約80億円を支給した。県は対象となる宅地被害を1万件弱と推定しており、「宅地復旧は今後も続く」(建築課)とみている。

 一方、県内のある業者は「見積もりを高くすれば、より多くの支援金が出るから、手出しは発生しない」と売り込む業者を目撃したという。この業者は建設業の許可もない“便乗組”で、「宅地復旧工事の能力があるか疑わしい」と明かす。

 県内の町担当者の1人は「怪しい業者の情報は市町村間で共有し、そのような業者の工事は厳しくチェックする」と強調する。

 宅地被害が甚大で、基金申請が3月末時点で約830件あった益城町。復旧事業課は、宅地復旧も進み、類似の工事と比べ、不自然に工事費が高い場合、申請段階で分かるという。担当者は「被災者は、必ず複数の業者から見積もりを取り、不安な場合は市町村の担当課に相談してほしい」とアドバイスする。

(2019/4/19 熊本日日新聞