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岸田政権が乗り出す「空き家への課税強化」 特定空き家の認定厳格化で固定資産税が跳ね上がる

 親から相続した家が“空き家”状態になっている──そんな人は、「直ちに策を講じなければならない」と専門家は指摘する。現在、検討されている空き家への固定資産税の増税、不動産価格の下落により「売るに売れない」状況に陥りかねないからだ。

 空き家対策として岸田政権は課税強化に乗り出す方針(時事通信フォト)
空き家対策として岸田政権は課税強化に乗り出す方針(時事通信フォト)© マネーポストWEB 提供

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 首都圏にある実家を空き家にしたまま「持て余している」という60代男性が語る。

「数年前に親が亡くなり実家を相続しましたが、自分はマイホームがあるため、誰も住まない実家は空き家状態に。父母や兄弟との思い出もあるので売る決断もなかなかできず、ずっとそのままの状態です。固定資産税や維持管理費もかかり、この先どうすれば……」

 総務省の「住宅・土地統計調査」(2018年)によると、全国の空き家は849万戸だった。そのうち、賃貸や売却用を除く(居住目的のない)空き家は349万戸。20年前からほぼ倍増し、2030年には470万戸に増加する見込みだ。全国で放置される空き家の増加に歯止めをかけるべく、岸田政権は「空き家への課税強化」に乗り出す方針であることが、昨年末、報じられた。

 空き家が増加した背景には、現在の「税制」が関係している。相続に詳しい税理士の山本宏氏が解説する。

「築年数にかかわらず、建物が建ってさえいれば、固定資産税の『住宅用地特例』が適用され、課税額が更地の場合の最大6分の1まで減額されます。相続人は、誰も住まない家の建物を壊して更地にして土地を管理するよりも、空き家のままにして所有するほうが、節税につながるのです」

 

税負担だけではない空き家所有のリスク

 だが、近年は空き家所有にリスクが伴うようになった。山本氏が続ける。

「2015年5月から、いわゆる『空き家対策特別措置法』が全面施行されました。倒壊の危険や、著しく衛生上有害となる恐れがある、または著しく景観を損なっているなどの基準で自治体から『特定空き家』に認定された場合、固定資産税の特例から除外されることになります。

 今後、政府は特定空き家の基準をさらに厳格化する方針と思われ、『窓ガラスが割れている』『屋根の一部が損壊している』『外壁に亀裂が入っている』等の軽微な損傷でも特定空き家に認定される可能性が出てきました。特例が適用されなくなると、空き家の固定資産税は平均で4倍に増えると想定されます」

 税負担が増えるだけではない。空き家は基本的に火災保険への加入が難しく、自然災害などにより倒壊や火災が生じて近隣住民から損害賠償を求められた場合、所有者が全額負担しなければならない。庭の雑草や樹木が伸び放題になって害虫・害獣が大量発生したり、敷地内にゴミなどが捨てられるなど、衛生面の悪化リスクもある。

 また、管理や保全が不十分と認定された「特定空き家」を放置すれば、最悪の場合、行政代執行により空き家が強制的に解体され、100万円単位の解体費用を自治体から請求される可能性すらある。空き家を持て余していられる残り時間は少ない。今後の法改正の動きを見越して、早めに動き始めることが肝要だ。

(週刊ポスト1月27日号)