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改正所有者不明土地法を施行、不発の「地域福利増進事業」をテコ入れ

 さらなる増加が見込まれる「所有者不明土地」をいかに管理し、活用するか――。2022年11月1日、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律」(以下、改正所有者不明土地法)が施行された。「地域福利増進事業」の対象を追加したほか、市町村長による代執行制度を創設したのがポイントだ。国土交通省は、勧告・命令・代執行の基準を示したガイドラインなどを作成・改訂し、同日に公表した。

改正所有者不明土地法が想定する地域福利増進事業の例。自治体や民間企業だけでなくNPOや自治会も事業主体になれる。赤字で示したのが法改正で追加した施設(出所:国土交通省)
改正所有者不明土地法が想定する地域福利増進事業の例。自治体や民間企業だけでなくNPO自治会も事業主体になれる。赤字で示したのが法改正で追加した施設(出所:国土交通省
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 所有者不明土地とは、相続登記がされないなどの理由で所有者の特定や所在の確認が難しい一筆の土地を指す。所有者不明土地法は、増加する所有者不明土地を地域の実情に合わせて管理・利用するため、19年6月に施行された。今回の改正は、対策を加速させるのが目的だ。

 改正法のポイントは大きく3つ。1つ目は「所有者不明土地の利用の円滑化の促進」、2つ目は「災害等の発生防止に向けた管理の適正化」、3つ目は「対策の推進体制の強化」だ。

 1つ目の「利用の円滑化」では、地域福利増進事業の対象事業などを見直し、併せて既存のガイドラインを改訂した。同事業は、自治体や民間企業が所有者不明土地に公園や防災空地、店舗などの公益性の高い施設を整備し、活用する仕組み。改正法では、自然災害の激甚化を背景に、備蓄倉庫や貯水槽などの災害関連施設や、再生可能エネルギー発電設備をメニューに加えた。

 購買施設や災害関連施設、再エネ発電設備などについては、土地使用権の上限期間を10年から20年に延長した。土地の使用期間よりも施設の耐用年数が長いため、費用対効果が低かったからだ。このほか、損傷・腐朽によって利用が困難で、引き続き利用されないと見込まれる建物が立つ所有者不明土地も事業の対象とし、都道府県知事の裁定で除却できるようにした。改正前は、物置のような簡易な建屋を除き、建物がある土地は同事業の対象外だった。

地域福利増進事業のフロー。事業者が都道府県知事に土地使用を申請する。法改正では申請内容の縦覧期間を6カ月から2カ月に短縮し、手続きを簡素化した(出所:国土交通省)
地域福利増進事業のフロー。事業者が都道府県知事に土地使用を申請する。法改正では申請内容の縦覧期間を6カ月から2カ月に短縮し、手続きを簡素化した(出所:国土交通省
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 22年11月時点で、地域福利増進事業に基づき整備が進んでいるのは、新潟県粟島浦村の防災空地のみ。国交省土地政策審議官グループ土地政策課の米田翔一国土調査企画官は、「事例を蓄積するためにも、民間企業が取り組みやすいような、使い勝手の良い制度にする必要がある」と説明する。

(2022/11/21 日経XTECH)