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建設業で増える「物価高倒産」、資材高騰がコロナ禍に追い打ち

 資材や原燃料などの価格高騰による倒産が増えてきた。帝国データバンクの調査によると、2022年8月の「物価高倒産」は34件と、前年同月比で2.6倍に急増。これまで最も多かった22年7月の31件を上回り、2カ月連続で過去最多を更新した。

 22年1~8月の物価高倒産の累計は150件。調査を開始した18年以降で最も多かった21年の138件を上回り、8月時点で年間最多記録を更新した。8月までの累計では、建設業は運輸業に次いで多い。帝国データが22年9月8日に発表した。

帝国データバンクは2022年9月8日に「物価高倒産」の調査結果を発表した。写真はその資料の一部(出所:帝国データバンクの資料を基に日経クロステックが加工)
帝国データバンクは2022年9月8日に「物価高倒産」の調査結果を発表した。写真はその資料の一部(出所:帝国データバンクの資料を基に日経クロステックが加工)
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 帝国データでは、資材や原燃料などの仕入れ価格の上昇に加え、取引先からの値下げ圧力などで価格転嫁できなかった「値上げ難」などによる倒産を物価高倒産と定義。企業への取材を通じて倒産理由が判明したケースを集計した。

2022年1~8月の「物価高倒産」の発生件数(出所:帝国データバンクの資料を基に日経クロステックが作成)
2022年1~8月の「物価高倒産」の発生件数(出所:帝国データバンクの資料を基に日経クロステックが作成)
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2022年1~8月の「物価高倒産」の業種別内訳(出所:帝国データバンク)
2022年1~8月の「物価高倒産」の業種別内訳(出所:帝国データバンク
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 22年1~8月に発生した物価高倒産150件のうち、建設業は34件で、全体の23%を占める。倒産件数トップの運輸業の42件(28%)に次ぐ多さで、製造業(23件)や卸売業(23件)を5割近く上回る。建設業の内訳は、総合工事19件、職別工事10件、設備工事5件。いずれも建築分野の工事を手掛ける中小・零細企業が多い。

 建設業では、物価高の影響だけではなく、新型コロナウイルスの感染拡大や人手不足などによる倒産も目立つ。帝国データによると、22年8月の建設業の倒産件数は98件と、前年同月比で25.6%増えた。22年5月以降4カ月連続で前年同期を上回り、月100件前後で推移している。前年同期からの増加率は、各月とも2桁に達する。

 中小・零細建設会社では、飲食店や宿泊施設などの工事計画の中止や延期、縮小の影響を受け、業績が悪化している企業が少なくない。コロナ禍で経営体力を消耗しているところへ、ロシアによるウクライナ侵攻や円安の急激な進行に伴う物価高が追い打ちとなり、事業を断念するケースが相次いでいる。

 帝国データでは、価格転嫁を目的とした値上げの動きが企業間で広がりつつあるが、十分な転嫁ができるとは限らず、価格を据え置く他社との競争激化による売り上げの減少といったリスクもはらむと指摘する。

2022年1~8月における倒産件数の前年同月比の増減率(出所:帝国データバンクの資料を基に日経クロステックが作成)
2022年1~8月における倒産件数の前年同月比の増減率(出所:帝国データバンクの資料を基に日経クロステックが作成)
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(2022/9/14 日経XTECH)