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ウッドショックに住宅業界が悲鳴、トラブル回避の秘策は建て主との「合意書」

 木材が供給不足に陥り、価格が高騰する“ウッドショック”に住宅業界が震撼(しんかん)している。2021年3月ごろに影響が顕在化し、その後は悪化の一途をたどる。日刊木材新聞社の調査によると、ベイマツ乾燥材正角の4月の販売店価格は7万8000円/m3で、半年間で44%も上昇した。住宅会社からは「木材が現場に届かず、4月末の着工を延期した」「工事請負契約を済ませた住宅7棟分の製材費の損失が、350万円に達した」といった悲鳴が聞こえてくる。

 ウッドショックによって、今後、頻発する恐れがあるのが、木材の仕様や工期、価格の変更に伴う建て主とのトラブルだ。本稿では、ウッドショックに伴う住宅業界の最新動向をリポートしつつ、トラブル回避策を探る。

 1992~93年や2008年のリーマン・ショック直前に巻き起こった木材価格高騰に続き、今回で3回目となるウッドショックは、コロナ禍で北米の新築住宅需要や増改築需要が高まったことを契機に発生した。

 北米材の需給が世界的に逼迫し、先物価格が上昇を続けるなか、追い打ちをかけたのが中国の経済回復などに伴う木材需要増だ。さらには世界的なコンテナ不足と、21年3月に発生したスエズ運河での大型コンテナ船の座礁事故によるサプライチェーンの混乱が重なり、日本向けの北米材と欧州材が原材料(原木やラミナ)もろとも供給不足の状態に陥った。

 供給不足が最も深刻なのは、梁(はり)に用いる集成材と製材。もともと輸入材の占める割合が高く、国産材の生産量が限られている部材だ。構造計算にも関係する部材なので、設計上も代替が容易ではない。プレカット会社からは「いつ現場に納品できるか分からない。1~2カ月先になるかもしれない」という声も聞かれるほどだ。

 日刊木材新聞社が調査した20年10月と21年4月の価格を基に、この期間の上昇率を計算すると、輸入材を使ったSPF2×4(ツーバイフォー)材が62%、ベイマツ乾燥材正角が44%、同平角が36%、レッドウッド集成材平角が25%、ホワイトウッド集成管柱が22%、それぞれ上昇している。木材の価格上昇は、輸入材だけでなく国産材にも波及してきた。国産のスギ乾燥材正角も上昇率が46%に達した。

2020年10月~21年4月の木材価格の推移を種類別に示す(資料:日刊木材新聞社が調査した木材価格を基に日経クロステックが作成)
2020年10月~21年4月の木材価格の推移を種類別に示す(資料:日刊木材新聞社が調査した木材価格を基に日経クロステックが作成)
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2020年10月~21年4月のホワイトウッド集成管柱の価格を示す(資料:日刊木材新聞社が調査した木材価格を基に日経クロステックが作成)
2020年10月~21年4月のホワイトウッド集成管柱の価格を示す(資料:日刊木材新聞社が調査した木材価格を基に日経クロステックが作成)
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 供給不足とそれに伴う輸入材の価格上昇は、しばらく解消しない見込みだ。林野庁は21年3月25日に開催した木材需給会議で、21年7月~9月の輸入構造用集成材が、20年7月~9月の75%の供給量になるとの見通しを示した。21年3月29日には日本集成材工業協同組合が構造用集成材について「5月以降、2割以上の減産せざるを得なくなるとの見方も出ている」と発表した。

日本集成材工業協同組合が2021年3月29日に発表した構造用集成材の供給見通し。同組合による構造用集成材の生産量は国内生産量全体の8割に上る(資料:日本集成材工業協同組合)
日本集成材工業協同組合が2021年3月29日に発表した構造用集成材の供給見通し。同組合による構造用集成材の生産量は国内生産量全体の8割に上る(資料:日本集成材工業協同組合)
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 さらに林野庁は4月14日、「国産材の安定供給体制の構築に向けた需給情報連絡協議会」を臨時で開催。その席でも日本木材輸入協会が、「米国の住宅ローンは3%前後と史上まれに見る低金利で住宅市場は好況なので、今年いっぱいは輸入材の供給不足が続く可能性がある」などと見解を示した。

 価格については、製材最大手の中国木材(広島県呉市)が4月21日の納品分からベイマツ乾燥材とスギ集成材正角を1m3当たり6000~7000円値上げするとプレカット会社に通知。同社の値上げは、21年に入ってから既に3度目になる。

 欧州材のレッドウッド集成材とホワイトウッド集成材の価格について、集成材最大手である銘建工業(岡山県真庭市)の営業部で部長を務める柳征治郎氏は「21年7月~8月に、20年末比で50%増になりそうだ」と予想する。欧州材は原材料のラミナ価格の上昇が続いているが、供給量を確保するために高値でも買わざるを得ない状況だからだという。

(2021/5/10 日経XTECH)