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中国産合板でJAS停止措置

登録外国認証機関であるムトゥアグンルスタリ(インドネシア)は2022年10月10日付で農林水産省に、江苏笨笨猫新材料有限公司(中国・江蘇省)に対する日本農林規格JAS)の業務停止請求報告書を提出、同社のJAS認証を一時停止した。

対象農林物資及び認証の技術的基準に適合しない期間は、合板(低ホルムアルデヒド構造用合板)が2022年2月22日製造分から現在まで、単板積層材(造作用単板積層材)が2022年5月12日製造分から現在まで。ムトゥアグンルスタリの報告書によるとJAS認証停止期間は2022年10月10日から2023年1月9日までとなっている

ムトゥアグンルスタリは江苏笨笨猫新材料有限公司に対し、認証の技術的基準に適合しない期間に製造された製品について、JAS表示の抹消または回収を指示している。抹消の仕方としては、合板、単板積層材に記されたJAS認証マーク等を消去する等の措置が必要になるようだ。

今のところ、抹消ないし回収に関する動きは聞かれていないが、農林水産省は事態の影響を把握するため、ムトゥアグンルスタリを通じて江苏笨笨猫新材料有限公司からの製品の流通量や流通先等の確認を進めているという。

ムトゥアグンルスタリによる業務停止請求理由は、2022年8月31日から9月3日にかけて行われた工場監査時に品質管理記録及び工場内で試験を行った記録の提出を依頼したにも関わらず、正当な理由なく記録類を提出しないためとしている。監査期間中に品質管理データ、毎日の生産管理テストの立ち合い検査がなかったと報告している。ムトゥアグンルスタリでは江苏笨笨猫新材料有限公司に対し各種資料、データ等の提出、改善策を明らかにするよう求めている。

合板と単板積層材がJAS不適合

同社の合板(低ホルムアルデヒド構造用合板)は2022年2月22日製造分から、単板積層材(造作用単板積層材)は2022年5月12日製造分から、JAS認証材ではなくなる。ムトゥアグンルスタリが最後に確認できた日付が上記のため、それ以降の製造分がJAS不適合となったという。このため、同日以降に製造され、日本市場に入荷・流通している製品はJAS製品として販売できなくなる。また、JAS認証証書類、JASスタンプの速やかな返還も求めている。

今後、大きな問題となりそうなのは監査期間を大幅に遡ってのJAS不適合となったことで、同日以後にJAS認証材として入荷した同社製品がJAS認証材として取り扱えなくなったことだ。

流通在庫はもとより、既にJAS前提で建築材料に使用されたものもJAS不適合となるおそれがあり、取扱事業者は困惑している。2002年には欧州産JAS構造用集成材で、2005年にも同様の欧州シッパーを窓口として日本の供給されていた中国産JAS構造用集成材で剥離問題が起き、農林水産省国土交通省JAS認証関係機関を巻き込む大問題となったケースもある。

2021年以降の木材製品価格急騰では国産針葉樹構造用合板価格も大幅に上昇するとともに、工務店などを中心に入手難が表面化し、国産針葉樹構造用合板等の代替として中国産針葉樹構造用合板輸入が急増した。

2022年8月累計で合板輸入量は140万㎥(前年同期比16%増、財務省貿易統計を元に農林水産省が集計)。このうち中国産は18万4000㎥(同139%増)となっており、中国における合板のJAS工場認証も大幅に増加している。中国産は特にロシア産カラマツを原材料とした全層針葉樹合板の日本向け主産地でもある。今後、他の中国JAS工場でも同様の問題が出てくるのかも気になるところだ。

(2022/10/19 新建ハウジングWeb)