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相続登記を義務化へ 罰則検討、手続きは簡素化

法務省の法制審議会(法相の諮問機関)が年内にまとめる所有者不明土地対策の原案が分かった。不動産を相続する人が誰なのかをはっきりさせるため、被相続人が亡くなった際に相続登記の申請を義務付ける。手続きを簡素化する代わりに、一定期間のうちに登記しなければ罰則を設けることを検討する。

所有者が分からないまま放置される土地が今後も増えるのを防ぐのが狙いだ。法制審は年内に案をとりまとめ、意見公募を経て答申を出す。法務省は2020年秋にも想定される臨時国会に、民法不動産登記法の改正案の提出をめざす。

 

 

現在、相続登記する際はすべての相続人を挙げて申請する必要がある。被相続人の出生から死亡までの戸籍の提出を求めるなど煩雑な手続きが必要だ。

新制度では被相続人の死亡を証明する書類があり、自分が相続人の一人だと証明できれば相続人全員がそろわなくても簡易的に登記できるようにする。その土地などを巡って売買や賃借など取引をしたい外部の人にとって問い合わせ先の相続人がはっきりする。

所有者不明土地の問題を巡り、被相続人の死後、相続人が登記簿上の名義を書き換えないまま放置する例が相次いでいる。特に価値の低い土地は放置されがちで、名義の書き換えの手間や登記費用などを嫌って登記しない人が多いとの指摘があった。

所有者不明の土地は外部からは権利者が誰か分かりにくく、円滑な不動産取引を妨げる要因となる。管理が十分でないまま放置されれば周辺環境の悪化にもつながりかねない。都市部に所有者が分からない不動産があれば再開発の遅れにもつながる。

法制審は被相続人の死亡時に簡易的な登記を義務付け、所有者の分からない不動産がこれ以上増えないようにする。手続きを簡素化する代わりに、被相続人の死亡後、一定期間のうちに登記しなければ罰則を課す。登記を怠った相続人への罰金では「10万円以下」や「5万円以下」といった案が検討されている。詳細は今後詰める。

法制審の原案には遺産分割を協議できる期限を「10年」と定めることも盛り込んだ。現在は法的な期限はない。

相続開始から10年で協議や申し立てがなければ法定相続分に従って分割可能にする。現行では話し合いが滞ると分割されないまま放置される事例があった。期限を設けることで遺産分割の話し合いも進むのではないかとの期待がある。

現在の民法では土地所有権の放棄を認めていない。所有権は土地の適正な管理や税金の支払いなど所有者の義務もセットであり、放棄を認めてしまえば課税逃れや管理費用を国に転嫁しようというモラルハザードを招きかねないためだ。

法制審の原案では「所有を巡って争いが起こっておらず、管理も容易にできる」のを条件に、所有権の放棄を可能にすると明記した。法人による放棄は引き続き認めない。放棄された土地はいったん国に帰属させ、地方自治体が希望すれば取得できる仕組みを検討していく。再開発など土地の有効活用につなげる。

所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也東大公共政策大学院客員教授)による推計で、16年時点の所有者不明土地は全国に410万ヘクタールあるとされ、九州本島の面積約370万ヘクタールを上回る。

(2019/11/26 日本経済新聞