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カビに悩まされる真備の浸水家屋

 西日本豪雨で浸水被害を受けた倉敷市真備町地区で、被災から約4カ月がたち家屋の片付けが進む一方、残ったカビの取り扱いが被災者の悩みの種になっている。適切な除去方法について情報が浸透しておらず「取り切れているのか」など不安の声が上がっている。関係団体は相談を呼び掛けている。

 「カビがなくなれば家をリフォームできると思い取り除いているが、再び生えないか心配」。2階の床上まで水に漬かる被害が出た同町地区の自宅で、女性(56)がつぶやく。

 被災の1週間後に自宅に戻ると、浸水した畳や床、天井などに青や黒、白色のカビが繁殖していた。家財の搬出、床下の泥出しなどを進めるとともにカビが付着した柱はボランティアから教わった通り、塩素系消毒薬の希釈液を含ませた雑巾で拭き取っている。

 「リフォーム費用を考えるとカビ取りを業者に任せる余裕はない。試行錯誤でやってきた」と女性。何とか仕上げの段階までこぎつけたという。

同市災害ボランティアセンターなどの運営に携わる一般社団法人「ピースボート災害ボランティアセンター」(東京)の遠藤聡さん(35)によると、家屋のカビを巡り「湿気を含むとまた生えるかもしれない」「片付いていない隣家から胞子が飛んでくるのでは」などの悩みが、市災害ボランティアセンターなどに寄せられている。

 「9月ごろから目立ってきた。家の片付けが進み、壁を剥がすとカビが現れて驚いた—といった経緯をたどるよう」と遠藤さん。

 岡山県内の建築関係団体で組織し、豪雨後、浸水した住宅を巡る電話相談に応じている「おかやま建築5会まちづくり協議会」によると、片付けの初期段階で適切な対処をしなかったばかりにカビを招いたケースもあるという。

 被災者のカビにまつわる戸惑いやトラブルの背景にあるのは、正しい情報の不足だ。倉敷市は消毒用の逆性せっけんを被災者に配布する際、用法の説明書を添えているが、多くの人が閲覧できるホームページでは発信していない。全国の災害経験を基に民間団体が作った関係の冊子はあるものの、被災者に行き届いてはいない。

遠藤さんは「市災害ボランティアセンターでは、消毒を請け負う団体の紹介やボランティア派遣によるカビの生えた板の除去などができるので相談してほしい」と話している。

 ◇消毒薬で拭き乾燥 茨城県常総市の鬼怒川決壊による住宅被害調査を続ける長岡技術科学大(新潟県)の木村悟隆准教授によると、浸水した石こうボードや断熱材は取り換える必要がある。柱などのカビは、消毒用エタノールまたは希釈した逆性せっけんや塩素系消毒薬で拭き取った後、十分乾燥させれば除去効果は高い。

 適切に消毒した同市の世帯では、4カ月後には屋内のカビの量が正常値に戻り、梅雨時季も再発することはなかったという。木村准教授は「カビは含水率15%以下では発生しないので、安価に購入できる水分計で計測するのもお勧め」と助言している。

(2018/11/5 山陽新聞