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ドローンで森林情報デジタル化 市有林公売での活用開始 宮崎・串間

宮崎県串間市は、小型無人機「ドローン」などを使って計測した樹木の本数や高さ、地形など森林資源のデジタル情報を活用した市有林の公売を始めた。公有林の売り払いにデジタルデータを生かすという全国でも珍しい試み。林業従事者の高齢化が進む中、公売の前提となる森林調査の省力化につながるため、関係者は「持続可能な林業への一歩」と期待している。

 串間市市木の山間部で6日にあった公売対象の市有林(13ヘクタール)の事業説明会。ドローンなどを使って得られた森林情報が現地のモニター画面に映し出された。データはタブレット端末で山の中でも確認できるため、参加業者からは「地形が分かるので作業しやすい」との声も上がった。

森林組合連合会(県森連)とNTT西日本、宮崎大は約2年前から、ドローンを使って森林情報をデジタル化する手法を研究。調査ではドローンに取り付けたレーザー装置やカメラを使って、樹木の本数や樹高、地形などを計測。NTT西が保有するAI(人工知能)を使って樹木の種類を特定するなどし、森林情報を作成する。

 これまで森林調査は、人が山に入って1本ずつ調査・測定してきた。県森連によると、人手と日数がかかる重労働のため、調査自体が進まず売買できない山もあるという。13ヘクタールの山林を4人で調査した場合は、情報の収集から解析まで平均13日程度必要だが、ドローンやAIを使えば調査に1時間程度、解析は2、3日で終わるという。

 さらに、人力作業に比べて精度が高い樹高や地形情報を得られるのも特徴だ。幹の直径だけはレーザーで計測できないため、樹高から割り出して推定する。県森連が一定の区画で調べた結果、従来の実測調査との木の体積の誤差は3%以内だった。コストは人力と同程度だが、各地で同様の取り組みが普及すれば抑えられるという。

 市農地水産林政課の川崎典和・林政係長は「正確な情報を素早く安全に得られ、伐採期を迎えた市有林の適正な管理ができるようになる」と強調。県森連の大地俊介・労働安全・山づくり対策室長は「勘と経験が重視される林業の世界で、デジタルをどう普及させるかが課題だ。小さいけれど大きな一歩」と話した。

(2022/4/7 毎日新聞