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隣の土地誰のもの? 境界確認なくても売買可能に 来春開始めざす

 所有者のわからない土地が増えるなか、取引時に土地の境界を所有者から確認しなくて済むよう法務省が見直しを検討している。土地取引を促進する狙いがあり、各地の法務局が保管する地図や測量図などをもとに境界を認定できるようにする。来春の運用開始を目指す。

 土地を売買するには対象の土地の範囲を確定させて登記する必要があり、申請に基づき登記官が調査して境界を認定している。調査にあたっては、隣の土地との境界をその所有者と確認したことを示す「筆界確認書」の提出を求める運用が定着しており、境界認定の有力な根拠としている。

 ただ近年は、隣の土地に立つ家は長い間人が住んでおらず誰のものかもわからない、といったことが都市部でも少なくなく、所有者が不明のため確認書を得られないケースが後を絶たないという。

 そこで、法務省が検討中の案では、国が全国で整備を進めている境界の地図や、精度の高い測量図の活用を想定。対象の土地の分が登記所に保管されていれば、調査に際し確認書は不要とする。所有者が判明しない場合には地図や測量図がなくても、以前の所有者のときに作成された確認書でも利用できるようにすることも盛り込まれた。

 また、所有権者が複数いる共有地については、現状では全員分の確認書を求めているが、判明した人の分だけで認めることとした。

 国内の土地はそれぞれ所在や面積、所有者が登記簿に記録されているが、登記簿上の所有者が亡くなっていたり連絡が取れなかったりすることも多い。こうした「所有者不明土地」は国の調査で全国の約2割に上り、公共事業や都市開発の妨げになっている。有識者研究会の推計では2016年時点の総面積は九州本島を上回る410万ヘクタールで、40年には北海道本島に迫る720万ヘクタールに達する可能性があるという。

 所有者不明土地が増加しているのは、相続時に名義が変更されていないことなどが原因とされている。今後の増加を防ぐため、今年4月には改正法などが成立。相続時の登記を義務づけて違反に過料を科す一方、望まない相続により土地が放置されるのを防ごうと相続人が土地を手放せる制度を新設することが盛り込まれた。それぞれ公布から3年以内、2年以内に施行される予定になっている。

 相続時にも2人以上で土地を分ける場合には筆界確認書が必要で、その負担から相続をきっかけに所有者不明土地が連鎖的に増える恐れも指摘されてきた。今回の運用の見直しにより、法務省はこうした事態の解消も図る考えだ。

(2021/10/7 朝日新聞