大手住宅メーカー積水ハウスが「地面師」詐欺被害に遭った事件で、地主に成り済ました羽毛田(はけた)正美容疑者(63)らが地主名義の偽造パスポートを使い、地主本人であることを示す公正証書を不正に取得し、積水側に示していたことが捜査関係者などへの取材で分かった。 (福岡範行)
警視庁捜査二課は、地面師グループが複数の本人確認書類を不正に入手し、積水側を信用させたとみて調べている。
捜査関係者や民事訴訟の資料によると、地面師グループは羽毛田容疑者の顔写真を張り付けた地主名義の偽造パスポートを所持。羽毛田容疑者とみられる女は昨年三月、東京都品川区の戸籍住民課で偽造パスポートを示して名義人に成り済まし「印鑑登録証明書を紛失した」と改印を申請。偽の印鑑登録証明書を取得した。さらに同年四月、都内の公証役場で公証人に偽の印鑑登録証明書と偽造パスポートを示し、申請者が地主本人だと認証する公正証書を不正に取得していた。
積水の調査対策委員会の報告書によると、東京・西五反田の土地取引を仲介した生田剛(いくたつよし)容疑者(46)は、この公正証書を積水の営業担当者に提示。この土地は「地主が売らない土地」として有名だったため、積水側は当初、地主が本物かどうか疑問視していたが、生田容疑者から公正証書を示されたことで、購入に向けて動きだしたという。
公証人は検事や裁判官の経験者らが務め、申請者が土地権利証をなくした場合などに、公証人から本人確認を受けることで土地取引を進めることができる。
東京公証人会の大野重国会長(65)は「公証人が利用されるのは悔しい。書類の偽造を確実に見破るのは難しいが、チェック態勢を厳しくして不正を防いでいきたい」と話した。