全国知事会が静岡県熱海市の土石流災害を受けて実施したアンケートで、都道府県の6割が地元で造成された盛り土への対応に苦慮している実態が浮き彫りになった。事業者が是正指導に従わないなど、熱海市と同様の悩みを抱える自治体は多い。内閣府が2021年10月29日に開いた有識者検討会の会合で明らかになった。
会合の開催は、21年9月末に続いて2回目。約1カ月ぶりの開催となる今回は、全国知事会などへのヒアリングを実施。今後の規制の方向性などを議論した。全国知事会では、危機管理・防災特別委員会の委員長を務める黒岩祐治・神奈川県知事が都道府県へのアンケート結果と同県の盛り土規制を報告した。
アンケートによると、盛り土を規制する条例を制定している自治体は26と全体の55%を占める。このうち、9割に当たる24自治体が許可制を取っている。残りは、事前協議制が1自治体、届け出制が1自治体。条例を持つ自治体では、7割に当たる18自治体が規制対象の盛り土を3000m2以上に設定している。
熱海市で土石流災害が発生した静岡県は、45年前に条例を施行。都道府県で唯一届け出制を採用し、盛り土の規模が1ha未満の場合には市町に権限を委譲している。隣接する神奈川県は22年前に条例を施行。2000m2以上を許可制としている。
熱海市の土石流の起点となった盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)は、このような両県の違いに着目。地元の神奈川県よりも規制の緩い隣の静岡県に建設残土を持ち込んだとみられる。
同様に、規制の厳しい自治体から規制の緩い自治体に残土を運び入れる事業者は少なくない。全国知事会のアンケートでは、条例を設けていない自治体でも、7割近くの14自治体が制定に前向きな姿勢を示している。このうち、6自治体は既に条例の制定を予定。3自治体は検討中で、5自治体が今後検討すると回答した。