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住宅デザイン模倣で賠償命令、東京地裁が意匠権侵害と判断

 「BESS」ブランドの木造住宅を展開するアールシーコア(東京・渋谷)が、自社のデザインを模倣したとしてマキタホーム(鳥取市)を訴えた裁判で、東京地方裁判所は2020年11月30日、マキタホームの意匠権侵害を認めて、販売の差し止めや賠償金約85万円の支払いを命じる判決を下した。両社ともに控訴期間の20年12月13日までに控訴せず、判決が確定した。

 

左はアールシーコアが販売する住宅シリーズ「ワンダーデバイス」、右はマキタホームが鳥取市内で販売した住宅。柱と梁で十字を構成するデザインが酷似していた(写真:アールシーコア)
左はアールシーコアが販売する住宅シリーズ「ワンダーデバイス」、右はマキタホームが鳥取市内で販売した住宅。柱と梁で十字を構成するデザインが酷似していた(写真:アールシーコア)
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 建築のデザイン模倣に関しては、16年12月に喫茶店チェーン「珈琲所 コメダ珈琲店」を展開するコメダ名古屋市)が不正競争防止法違反を理由に、建物の営業差し止めを求め、仮処分命令が下された例がある。今回は住宅デザインの「意匠権侵害」を認めたもので、アールシーコアによると全国初の判決だ。

 アールシーコアがBESSブランドの1つとして販売するログハウス調の住宅シリーズ「ワンダーデバイス」は、正面の柱と梁(はり)で十字を構成するデザインが特徴だ。同社は、この形状について17年2月に「組み立て家屋」として部分意匠の意匠登録をしていた。ところが、マキタホームが鳥取市内で販売した住宅3棟のデザインが、アールシーコアが意匠登録したデザインに酷似していた。

 

アールシーコアは、住宅シリーズ「ワンダーデバイス」の柱と梁について、2017年2月に「組み立て家屋」の部分意匠として意匠登録している。実線で示した十字が意匠登録されている部分(資料:アールシーコア)
アールシーコアは、住宅シリーズ「ワンダーデバイス」の柱と梁について、2017年2月に「組み立て家屋」の部分意匠として意匠登録している。実線で示した十字が意匠登録されている部分(資料:アールシーコア)
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 20年4月に改正意匠法が施行されて建築物のデザインが保護の対象として認められるようになったが、「組み立て家屋」は改正意匠法の施行前から「市場で流通する動産で、意匠法上の『物品』に該当するもの」としてデザイン保護の対象だった。

 争いの発端は、マキタホームが問題となった住宅の写真を販促のために、写真共有SNSInstagram(インスタグラム)」に投稿したことだ。アールシーコアの顧客がマキタホームの投稿を見て、「デザインの盗用ではないか」とアールシーコアに連絡。アールシーコアは、現地でマキタホームの建物を確認した上で18年7月、同社に対して販売の差し止めを求める文書を送付した。

 

問題はマキタホームが写真共有SNS「Instagram」に住宅の写真を投稿したことで明らかになった(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
問題はマキタホームが写真共有SNSInstagram」に住宅の写真を投稿したことで明らかになった(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 しかし、マキタホームからの返答がなく、販売を差し止める様子も見られなかったため翌8月に提訴に踏み切った。アールシーコアは、マキタホームの行為が意匠権侵害や不正競争防止法違反などに当たるとして、問題となった住宅の除去と製造・販売・展示の差し止め、さらには約1023万円の損害賠償金の支払いを求めた。

(2021/1/22 日経アーキテクチュア)