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保全湿地の草木、国が誤伐採 NPO「希少生物が激減」

 埼玉県上尾市の国道バイパス拡張工事現場近くにある環境NPO保全湿地で昨夏、国発注の業者が草木を過って伐採し、希少な生物が激減するなどの影響がでていることがNPO側の調査でわかった。謝罪した国土交通省大宮国道事務所に修復へ向けた協議を申し入れたが、応じると返答が来たのは2カ月後。NPO側は「誠意と責任を持って対処を」と訴えている。 【写真】今年4月3日の同じ場所。ノウルシの花はほとんど見られない=上尾市領家、NPO「エンハンスネイチャー荒川・江川」提供  バイパスは、すでに一部区間が暫定2車線で開通している通称「上尾道路」で、沿道にある荒川支流の江川周辺の湿地帯は、環境省や県が絶滅危惧類に指定するなどした希少な動植物が多数生息する。地元の五つの環境NPOは1990年前後から、特に保護が必要と思われる場所を買い取ったり、借りたりし、「トラスト地」として4カ所計約4ヘクタールを管理してきた。  バイパス4車線化への拡張工事で一部の湿地がなくなるほか、地形が変わり乾燥化する恐れもあり、NPOは、国道事務所の湿地保全検討会議に有識者や地元市民とともに加わり、話し合いを進めてきた。  今回、問題が起きたのは道路から70~80メートル南西のトラスト地約2千平方メートル。NPO側によると、環境省レッドリストで準絶滅危惧類のノウルシが群生し、絶滅危惧類のノカラマツやバアソブなどの湿地植物も多く見られた。だが昨年6月、国道事務所が発注した業者が無断で、NPOが守っていた草木を除草機でほぼ刈り取った。同国道事務所は除草すべき土地との境界の指示を怠ったとしてNPO側に謝罪した。  NPO側の今年6月までの調査だと、以前は500株以上あったノウルシが、今は100株ほどが散在するだけに。バアソブは確認できなかった。動物も、県内で絶滅危惧種ニホンアカガエルの卵が見られなくなり、希少種のオオヨシキリやカヤネズミも今年は営巣の様子がないという。

(2020/9/4 朝日新聞デジタル