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「空き家」最多 防災の観点からも対策を

帰省した際、古里に空き家が増えたことを実感する人は、多いのではないか。

空き家の増加は、福岡市などの都市部でも進行している深刻な社会問題である。少子高齢化が生んでいる現実だ。

景観を損ない、犯罪の温床となるだけではない。地震や豪雨の時は容易に倒壊し、新たな被害の発生源になったり、救急活動の妨げになったりする。防災の観点からも放置できない。

総務省が5年ぶりに実施した調査によると、全国の空き家は2018年時点で、846万戸と過去最多になった。前回調査より26万戸も増え、住宅総数に占める空き家率は0・1ポイント上昇して最高の13・6%となった。

九州7県の空き家率は高い順に、鹿児島が18・9%、大分が16・7%、宮崎15・3%、長崎15・1%、佐賀14・3%、熊本13・6%、福岡12・7%だった。前回と比べると熊本、長崎が下がり、福岡は同率で、ほかは上がっていた。

日本の住宅政策は経済成長と人口増を前提に進み、「持ち家」は人生最大の夢ともされた。郊外を中心に住宅地が整備されていき、家族を持つ現役世代が移り住んだ。その世代は年月とともに一線を退き、子どもたちは独立していく。Uターンは望み薄で、いずれマイホームは空き家となる。後継者不足に苦しむ農林水産業を基幹とした市町村の懸念はなおさらだ。

政府は法令を整備し、自治体と連携して次々に手を打っている。15年に完全施行となった空き家対策特別措置法では、倒壊の危険性があるなどの場合は自治体が解体できる仕組みを設けた。17年には空き家を単身高齢者向けの賃貸住宅として整備する改正住宅セーフティーネット法も施行された。

ただ、期待通りには機能していない。特措法の適用は私有財産に関わる問題だけに、指導や勧告など何重もの手続きを踏まなければ前に進まないためだ。

所有者が不明確な場合もある。親の死亡などで実家の相続人になったものの、買い手が付かないなどの事情から相続登記をしない例が増えている。解体の手続きの前に、法定相続人を漏れなく捜し出す必要がある。

近い将来、問題化しそうなのが、分譲マンションの空き家化だ。空き部屋の増加で修繕積立金が不足し、老朽化に対応できないなどの例が広がっている。

大勢の区分所有者がおり、戸建てと比べて権利関係はより複雑になる。戸数は今、建設が本格化した1970年ごろの50倍近い約640万戸に上る。

建物の大きさからも、空き家化の弊害は甚大になろう。同時に早急な対策が必要だ。

(2019/5/17  西日本新聞)