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所有者不明の土地、地震復旧の妨げに 熊本県6カ所で着工できず

 

 熊本地震の災害復旧関連工事で、相続手続きが長期間放置された所有者不明土地が支障となり、道路やのり面の復旧工事に遅れが生じている。県発注工事分だけで、益城町、御船町、宇土市、宇城市、南阿蘇村、西原村の計6カ所(8筆)の用地の一部が取得できていない状況で、地震から2年を経た現在も工事着手のめどが立たない場所がある。

 県土木部によると、所有者不明土地は不動産登記簿などで所有者が直ちに判明しなかったり、判明しても所在不明だったりするケース。相続手続きが長期間放置されてきたことが理由だ。

 2・5キロ区間で全面通行止めが続く益城町杉堂の県道熊本高森線は、道路脇の斜面の崩壊を止める工事を予定しているが、斜面の一部に当たる山林1筆(248平方メートル)が所有者不明だったため、この部分の工事が未着手。県は家庭裁判所に財産管理人の選任を申し立てて、取得を目指す「不在者財産管理人制度」を活用する方針だが、通行止めはさらに1年近く続く見通しという。

 宇城市松橋町では、がけ崩れ防止工事を実施する山林(1400平方メートル)のうち、1筆(65平方メートル)の取得見通しが立っていない。登記簿上の持ち主が150年以上前の江戸時代の人物で、所有権の登記もなされていなかったためだ。

 今秋までに取得できない場合、国の補助事業の執行期限となる2018年度中に工事が完了できず、部分的にがけ崩れの危険性が残る可能性がある。

 所有者不明土地は公共事業の用地取得の妨げとなっているとして全国で問題化。政府は収用手続きの簡素化などを柱とする特別措置法案を今国会に提出し、来年夏ごろの施行を目指すが、熊本地震の復旧事業への適用は間に合わない。

 県土木部は「住民の安全確保や不便解消のために、いずれも一日も早い取得が必要」と強調しており、地権者の特定を急いでいる。

(2018/4/11  熊本日日新聞)